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球界最小“身長164cm”滝澤夏央が自問した「自分の持ち味って何?」西武スカウトも期待する抜群のスピード、目標は源田壮亮
posted2021/12/12 11:01
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
17時に始まった2021年のドラフト会議。関根学園高校(新潟県)の滝澤夏央の名前が呼ばれたのは、時計の針が19時を指した頃だった。
「自分の名前が本当に呼ばれるのか不安でしかなかったです。呼ばれた時は嬉しさよりホッとしました。でも、自分は育成指名。ここからが本当に大事だと思いました」
西武ライオンズ育成2位指名。運命の時は、高揚感を胸にしまい込み、ひとつの覚悟が芽生えた瞬間でもあった。
滝澤の名は、地元新潟だけではなく、北信越エリアでは早い段階から広まっていた。1年春からレギュラーを掴み、いきなり2番・二塁でスタメン出場。夏には1番を打つようになり、巧みなバットコントロールでチームの核弾頭として打線をけん引してきた。秋からは主に遊撃を守るようになり、深い位置からでも体を一回転させて確かなスローイングで難しいゴロをアウトにする。何より大きな武器は50m5秒8の俊足だ。出塁すれば類いまれな脚力で果敢に次の塁をさらう。164cm・65kgという小柄ながら、泥臭く粘り強いプレーで相手を揺さぶり、走攻守で高い身体能力とスピードあふれるパフォーマンスを披露してきた。
「実は(公称の164cmより)もう少し小さいかもしれないです。あ、でも身長は朝に計ると、少しだけ大きめになるんです。165cmとか……」
そう言うと、あどけない表情が緩んだ。
「いつか伸びるだろうと思っていた」
3人兄弟の末っ子。2人の兄に続いて、物心がついた時から白球を握っていた。幼い時の遊びは主に野球。本来は小学校1年生からしか入部できない野球チームに特別に幼稚園年長から入れてもらった。最初は内野手として練習に加わり、一塁以外は全て内野ノックに入っていた。
「正面の当たりより、ヒット性の当たりをアウトに出来た時が気持ちがいいんです。守備範囲を広くできるようにしたくて、わざと後ろの方に守ることもありました」
幼い頃から背の順はいつも一番前だった。身長を伸ばすために苦手な牛乳を1日3度、コップ1杯ずつ飲むことを日課にしていた時期もあったが、長くは続かなかった。食事では小魚を多めに食するなど努力も重ねたが、なかなか成果は表れなかった。
「いつかは伸びるだろうと思っていたら、小学校高学年くらいから同級生がどんどん大きくなって追い越されていって……。自分はなんで? と思うこともありました」