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「真ん中に投げるくらいで、絶対、大丈夫」カープのセットアッパー候補・島内颯太郎が今季得た自信と飛躍のきっかけとは
posted2021/12/08 06:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PHOTO
3年連続Bクラスから来季上位浮上を狙う広島にとって、栗林良吏につなぐセットアッパーの確立が大きな鍵となる。
佐々岡真司監督就任後、2年続けて試合終盤の勝ちパターンを確立できていない。今季セ・リーグで7回、8回の得失点差がともにマイナスだった球団は広島しかない。特に8回の100失点、得失点差−47点はいずれもリーグワーストの数字だった。終盤の継投のローテーション制を理想としていた指揮官も、2年連続の空転に勝ちパターン固定への方針転換を明言している。
そんな状況下、セットアッパー候補として期待される若手選手のひとり、島内颯太郎は今年大きな成長を見せた。
入団時から150キロ超の真っすぐと、ハマったときには鋭く落ちるフォークは誰もが認めていた。入団時投手コーチだった佐々岡監督も「あの真っすぐとフォークの切れ味があれば、もっと簡単に打者を抑えられると思うんだけどな」と高い能力に期待を寄せていた。
ただ、成績は1年目が25試合に登板して防御率4.40、2年目はプロ初勝利を挙げ1勝0敗4ホールド、防御率4.54。ポテンシャルからすると、物足りない。
覚醒を導いたストレートの精度
課題は精神面にあった。普段からおとなしく、優しい。勝負の世界では、ときに弱点となることもある。
「昨年まではいい場面で投げると、どうしても結果を残したいと欲が出すぎていた」
好投し、中継ぎの中でポジションを上げると、それまでの投球ができなくなる。接戦で起用されても「無失点で抑えて戻れたら奇跡的」と不安の方が上回った。カウントを悪くして自分を苦しめ、歩かせ、痛打される。ポジションは下がり、そして二軍降格。二軍と一軍を行ったり来たりを繰り返してきた。
今年も4月10日に出場選手登録を抹消されるまでの3試合、いずれも2安打を許し計4失点。これまで見てきた島内の姿だった。
だが、二軍で再調整する中で、精彩を欠いていた真っすぐの精度が上がった。投球の軸となる真っすぐに本来のキレが戻ったことで、昨オフから改良してきたチェンジアップも、新たな武器として生きるようになった。