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「可能性しか感じてない」DeNAの2年目左腕・坂本裕哉は、強気とポジティブ思考で後半戦のキーマンになる
posted2021/08/14 11:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
好戦的で根っからの野球好き。そして誰よりも負けず嫌い。横浜DeNAベイスターズの坂本裕哉と話していると、いかにもピッチャーらしいというか、ただひとりマウンドに立つ人間としての気概を感じてならない。
2年目の今シーズンはここまで10試合に先発として登板し3勝2敗、防御率4.20と決して上々の数字とは言えないが、きらりと光る投球が幾度となく見られ、左腕として後半戦のキーマンとなる可能性を秘めている。
坂本はここまでの戦いを次のように振り返った。
「いい試合と悪い試合の差が激しいのが自分のなかの課題ですね。悪いときにいかにリズムを取り戻すのか。試合中の修正力を高めることが勝負になると思います。ただ今回の中断期間では、フォームも含め課題だった部分はクリアされつつあります。例えばスライダーやカットといった“曲がり球”を意図通り投げられない場面が少なからずあったのですが、先日のファームのロッテ戦(8月6日)では曲がり球で空振りを多く取れましたし、これは後半戦につながると思います。また真っすぐに関しても、この期間で精度や強さを高めることができたと手応えを感じています」
怪我の経験を糧にして得た成長
言葉に強気と自信が漂うが、坂本にとっては簡単ではない前半戦だった。今季2試合目となった4月23日の阪神戦で好投をすると、チームの連敗を10で止めて初勝利を挙げた。しかし次の30日のヤクルト戦で2回に打球を左肩に受け降板。翌日、登録抹消されてしまう。ふと昨季の光景が目に浮かぶ。プロデビュー戦で6回無失点というこれ以上ない好投をしたものの試合中に右足首を捻挫し長期離脱を余儀なくされた。坂本自身、今季いいスタートを切れたのに左肩を負傷したことで「またか……」と思ったという。
「ただ去年の経験もあるので、怪我をしたからといって凹むだけの期間にしてはいけない。野球以外にできること、学べることはたくさんあるので、昨年よりも割り切って怪我に向き合えたと思います」
経験値の蓄積が選手を強くする。怪我は思っていたよりも軽傷で、坂本は約1カ月で一軍に復帰すると、あらためてローテの一角を任せられた。前述したように好不調の波はあったが、6月3日のソフトバンク戦では勝敗は付かなかったものの強力打線を6回無失点で抑えるなど存在感を示している。とくに印象的だったのは6月29日の中日戦だ。雨の中の難しい試合、坂本は初回2失点するも、その後、三振とフライアウトを重ね、相手エースの大野雄大に投げ勝っている。