酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
オリックスを変えた“苦労人”の中嶋聡監督 山田久志や松坂、ダルの球を受けた“捕手らしい”の采配を数字で分析
posted2021/06/29 06:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
筆者は関西在住だが、地元ローカルの番組で「そろそろオリックスのことを話題にしたってくれ」という声が上がりつつある。
関西では佐藤輝明の華々しいデビューもあって、首位を快走する阪神の話題が喧しいが、オリックスだってものすごく元気なのだ。6月23日まで1984年以来37年ぶりという11連勝を記録したが、スポーツ紙のトップにならなかった。ネットでは「何連勝したら載せてくれるねん」という声さえ上がっている。
昨年8月20日の京セラドーム、西武戦を最後に西村徳文監督が事実上解任され、中嶋聡監督代行にチェンジした。
筆者はたまたま西村監督最後の試合と、中嶋監督代行最初の試合を観戦した。厳しい表情でメンバー表を交換する西村監督、マスク越しにもわかるほど笑みを浮かべながら照れくさそうにメンバー表を渡す中嶋代行、その対照の妙。大げさに言えば空気が変わっていた。
昨季の西村監督と代行期間、今季成績を比較
昨年の西村監督と中嶋代行、今季の中嶋監督の成績を並べる。
2020年西村監督時代 開幕から8月20日まで
53試合16勝33敗4分 率.327 打率.240 38本 防御率4.32
2020年中嶋代行時代 8月21日からシーズン終了まで
67試合29勝35敗3分 率.453 打率.252 52本 防御率3.70
2021年中嶋監督時代 6月27日まで
74試合36勝29敗9分 率.554 打率.257 70本 防御率3.44
チーム成績だけでなく、投打すべての指標が劇的に改善されている。中嶋監督の手腕が高く評価されるゆえんだ。
吉田正尚、山本由伸らがいたのは変わらないが
もともとオリックスは戦力的に大きく見劣りしていたわけではない。
打の吉田正尚、投の山本由伸と日本代表の主力クラスの選手を擁し、素材的には弱いはずがないと見られてきた。問題は投打の柱の周囲に配する選手の用兵、そしてモチベーションではないかと思われた。
それがどのように改善されたのか。西村采配と中嶋采配の違いを詳しく見てみよう。