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鳥谷敬から「守護神してるんですねぇ(笑)」能見篤史41歳、オリックスでの兼任コーチは“大変じゃない”
posted2021/05/22 06:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
もしも能見篤史がいなかったら、オリックスのブルペンは大変なことになっていただろう。
昨年12月の入団会見で、「阪神を戦力外になり、行くところがない状況で、オリックスさんに拾ってもらえた。またグラウンドに立てることに本当に感謝しています」と語っていた41歳が、今、陰ひなたでオリックスを支えている。
4月はリリーフ陣が安定せず、先発投手が好投しても、試合終盤に失点して敗れる展開が多かった。特に鬼門となったのが9回だ。
開幕時は漆原大晟、その後はタイラー・ヒギンスが抑えを任されたが、リードして9回を迎えても、逃げ切れずに追いつかれたり、逆転される試合が続いた。4シーズンぶりにメジャーリーグから復帰した元守護神の平野佳寿は、頸部痛のため4月中旬に登録を抹消され、ヒギンスも腰痛で4月27日に抹消。その日はK-鈴木が9回のマウンドに上がったが、先頭打者に四球を与えたところから3点差を追いつかれて引き分けた。
9回のマウンドに、誰が上がっても逃げ切れないという展開に、中嶋聡監督は「誰が乗り切れるのか、誰が乗り越えてくるのかな、という感じ。あまりにも続いているから、もうみんなが、あそこに(9回に)上がるのが嫌になっているのか……」と頭を抱えた。
「なんとか、誰かが殻を破らなきゃいけない。いつまでも(抑えが)いないいないでは困りますから」
悪い流れを断ち切ったベテラン
その流れを断ち切ったのが、チーム最年長の能見だった。5月2日のソフトバンク戦で、5-4で迎えた9回表に、満を持してマウンドに上がると、1点のリードを守りきり、9回の負の流れを止めた。
百戦錬磨のベテランは、しかしこう明かす。
「あそこの場面は、正直、全然行きたくない気持ちでした。でも、もう、名前は告げられてたので(苦笑)」
先頭打者に安打を許し、次打者がバントで送って1死二塁のピンチを背負ったが、能見は冷静だった。