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川崎宗則BC栃木入団は西岡剛の誘いが決め手。イチロー、鳥谷の走塁を見て「僕は今、スプリンター」
posted2020/09/02 11:30
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Naoya Sanuki
8月某日、目の前に座る川崎宗則の語気は強かった。
「鳥谷(敬)君のスプリントを見ました? 鳥肌が立った! やっぱりこれだと。生き残るには、脚力がすべてですよ。あのZOZOマリンでの生還は、鳥谷君がなぜ井口(資仁)さんに呼ばれてロッテに入団できたかを僕らに教えてくれる激走でしたよ」
20日のソフトバンク戦、延長10回裏にロッテの二塁走者・鳥谷が暴投で一気にサヨナラのホームを踏んだことを指している。鳥谷も川崎と同じ1981年生まれ、39歳だ。
一方、今季の川崎は所属チームのない日々を過ごしていた。昨季に続いて台湾球界に挑戦しようとしていたが、契約には至らなかった。
そんな中、川崎は昼夜問わずランニングに明け暮れていた。昨年、台湾で見たときよりも体は絞れているという印象を受ける。
「今ね、走ってるのよ。ランニングじゃないよ、スプリント。とにかく短い距離を走り続ける。日中に公園や砂浜でダッシュをして、夜、またトレーニングウェアに着替えて、夜道をダッシュする……夜ランにハマっているのよ。あ、ランじゃないね、スプリント。野手にゆっくり走るランニングの筋力はそれほど必要ないから、とにかく短距離を駆け抜ける。僕は今、スプリンターだから、実況では『ランナー』ではなく、『スプリンター』という表現にしてくださいね」
「イチローさん、3.72出ましたよ!」
それは、現役選手としては最も近くでイチローの姿を見てきた川崎が、辿り着いた答えでもあった。
「イチローさんの脚力は抜群だったよね、最後の最後まで。引退した東京ドームでのあの試合も、打ってから一塁を駆け抜けるまで3.72秒。九州の自宅で、僕はストップウォッチを片手にイチローさんのスプリントを測っては、イチローさんに塁間タイムをメールしていたんです。『イチローさん、3.72出ましたよ!』って。速かった、本当に。野手が長くやるにはやはり脚力だということを、イチローさんに教えてもらっていました。どんな筋肉をしているんだろうって、よくふくらはぎを触らせてもらっていましたよ(笑)」
2019年春、川崎はイチローと神戸で自主トレを共にし、夏には台湾球界に挑戦することを決めた。そして今年8月、ルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスへの入団が決定。日本球界には3年ぶりの復帰となった。