プロ野球亭日乗BACK NUMBER
中川皓太は山口鉄也の後を継げるか。
「代えのきかない選手」へ2つの課題。
posted2020/07/04 20:15
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
「いまこのチームで代えのきかない選手が2人いる」
巨人・原辰徳監督が2度目の監督時代の2012年に、こんなことを言い出すのを聞いたことがあった。
「1人は慎之助。もう1人は山口です。他の選手は故障で戦線離脱しても、違う選手をやりくりをすれば穴は埋まる。でもこの2人に関しては、いまのチームに於いて余人をもって代え難い存在となっている」
阿部慎之助捕手と山口鉄也投手のことだ。
この年の阿部はまさにチームリーダーとして巨人を引っ張り、プレーヤーとしても円熟味を増した絶頂期。結果的に'12年は打率3割4分で首位打者を獲得しMVPに選ばれるなど、この年のリーグ優勝と日本一の中で唯一無二と言える存在だった。
山口はユーティリティーリリーバーだった。
その阿部と並んで「余人をもって代え難い」と評価されたのが鉄人リリーバーの山口だった訳である。
山口もこの'12年には72試合に登板して44ホールド(3勝2敗5S)をマークして中継ぎ王となった。
ただ監督がこれほどまでに大きく評価した理由は、リリーフ陣の中でのその役割にあった。当時の巨人の勝利の方程式はこの山口を軸に西村健太朗、スコット・マシソンという3投手で構成されていた。
その中で山口は基本的にはクローザーの西村へとつなぐセットアッパー。ただ実際は相手打線の強弱によって、7、8回のいずれか、場合によっては9回でも自在に使えるユーティリティーリリーバーだったのである。