野球のぼせもんBACK NUMBER
「王さんが福岡の街を変えたんです」
気配りの男・城島健司が帰ってきた。
posted2019/12/29 11:50
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
ホークスに帰ってきた。むしろ帰ってきてくれた、という表現の方がしっくりくる。
12月20日、城島健司氏が「会長付特別アドバイザー」の肩書でホークスに復帰することが発表され、同日に福岡市内のホテルで就任会見も行われた。
「頑張りま~す」
わざとおどけた第一声で、かしこまった席を和ませた。そして、会見時のノーネクタイにジーンズというラフな格好がクローズアップされた。決して嫌味のある報道ではなかったが、仮にネガティブに受け止めたファンの方がいれば、城島氏は何の意味もなくそのような事をする人物ではないと言いたい。
球団フロントの要職に就くことで周囲はその“次”を期待してしまうし、アドバイザーという名称だけを聞けば指導者的な役割を担うのかと様々な想像もさせてしまう。
しかし、あくまで自分は新参者。現在のコーチングスタッフの中に土足で踏み入るわけでもなければ、監視者になるわけでもない。実はチームへのそんな気遣いを見て取れた服装だったのだ。
メディアの仕事を引き受けなかった理由。
豪傑に見えて、とことん気を配る。それが“城島健司”だ。
'12年に現役引退してから野球とは距離を置いて暮らしてきた。もともとプロ級の腕前だった釣りが主戦場となり、地元九州で週一レギュラーの番組を持った。ほかにゴルフ番組もあった。
この間に野球と関わったのは'13年の斉藤和巳氏の引退セレモニーの際に黄金バッテリーを復活させた時と、'18年2月に宮崎で行われたホークスとジャイアンツのOB戦に出場した時、そして今年3月のメジャーリーグ開幕戦始球式の3度くらいだ。
解説や評論活動はただの一度も行わなかった。弁の立つ城島氏だから引く手数多だったのは間違いないが、すべて断った。もちろん理由があったからだ。
「選手側の立場に常にいたかったから」
メディアで仕事をしてしまうと、本意でないことまで発言したり、あるいは誘導されてしまうかもしれない。また、ユニフォームを着ていたころと違ってずっと一緒にいられるわけでも、そばで見て感じることも出来ない中で、分かった風にモノをいうのが自分のポリシーとは違うと判断したからだった。