ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「人間の脆さを感じた1年でした」
DeNA梶谷隆幸、崖っぷちからの生還。
posted2019/11/10 11:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
「人間というものの“脆さ”をとにかく感じた1年でした。いや本当、危なかったですよ」
秋晴れの日、練習後の眩しい斜光を浴びながら、横浜DeNAベイスターズの梶谷隆幸は、まるで“生還者”のような表情で語った。
「今シーズンは野球以外の部分で成長を得ることのできた、これまでとはまったく違う時間を過ごしましたね。自分のキャリアのなかで初めてといえるような重要なシーズンだったと思います」
13年目のシーズン。昨年8月に右手首を骨折し、さらに右肩の手術などを経て新たな気持ちで挑んだ今季、開幕戦で1番・センターに抜擢された梶谷だったが、序盤は不振にあえいだ。
7試合でわずか1安打で4月8日登録抹消されるが、24日に再びチャンスをもらい一軍へ。しかしここでもヒットは出ることはなく、5月6日にまたもや登録抹消となってしまう。これ以後、梶谷は約3カ月半を二軍で過ごすことになる。
一軍からまったく声がかからない日々。
一軍からまったく声がかからない日々。2014年に梶谷がレギュラーになって以来、初めての経験だった。体力も技術も足りない若手時代のような状況でもなければ、ましてや怪我をしているわけでもない。
もう手術をした右肩は万全であり、しっかりとスローイングはできた。肉体的に万全であるのにも関わらず、長い二軍での生活がつづいていた。
神里和毅や佐野恵太ら若手の台頭により激化しているDeNAの外野手争い。チャンスをもらった選手たちは躍動し、そこに梶谷の付け入る隙はなかった。いろいろな感情や想いが梶谷の頭のなかを駆け巡る。