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これまでも、これからもずっと不器用。
広島のエース大瀬良大地、8勝目の光。

posted2019/08/05 18:00

 
これまでも、これからもずっと不器用。広島のエース大瀬良大地、8勝目の光。<Number Web> photograph by Kyodo News

ひさびさの勝利に、女房役・會澤翼と握手をする大瀬良大地。無四球完封勝ちでの、貴重な8勝目となった。

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 不器用な右腕が見せた124球の完封劇は、会心の投球というよりも、苦心の投球だったように映った。8月2日マツダスタジアムでの広島vs.阪神16回戦。広島・大瀬良大地は、これまでとは違うスタイルで今季2度目の完封勝利をマークした。

 大瀬良は6勝目を挙げた6月5日の西武戦から5試合白星から遠ざかった。7月26日ヤクルト戦で登板6戦ぶりに白星を手にしたものの、まだ本調子ではなかった。得意球カットボールの曲がりが大きくなったことに加え、フォークの落差も減った。わずかな誤差でも、投球に狂いが生じた。

 迎えた8月戦線。

 チームは首位巨人とのゲーム差を縮め、追い上げムードが高まっていた。大瀬良自身の状態はまだ上がってはいない。とはいえ、8月以降の戦いの重要性は分かっている。調子で結果を左右してよい立場ではもうない。今季、緒方孝市監督、佐々岡真司投手コーチらから「エース」と認められた者として、チームの勢いを止めるわけにはいかなかった。

フォークを多投した意味とは?

 本調子ではない中、バッテリーを組む會澤翼が配球で大瀬良をリードした。試合後も「いろいろ話し合いながら……」と女房役は多くを語らなかったが、この日は明らかにフォークが増えた。

「カットボールはボチボチ。フォークもいいというわけじゃなかった。試合の中で投げ方を変えながら、抑えられる形を探していた」と大瀬良。

 右打者には縦振りを意識、左打者にはシンカー気味に逃げるように落ちていくイメージでひねりを加えた。

 阪神と前回対戦した7月5日は9球だったフォークを23球使った。特に左打者には20球。前回は全体の約6%にも満たなかったフォークの割合が19%にまで上がり、左打者に限れば22%。登板前まで今季3戦2敗と、一度も勝てていなかった阪神打線を惑わせた。

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