球道雑記BACK NUMBER
前半戦をリーグ首位打者で折り返し!
ロッテ荻野貴司、復活の裏にある物語。
posted2019/07/15 08:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
感慨に浸っているのは見ているこちら側ではなかったか。
自身初出場となるプロ野球オールスターゲームを前に、千葉ロッテ・荻野貴司は淡々とした口ぶりでこう述懐した。
「今年も選んでもらえたことに関しては素直に嬉しいんですけど、オールスターだからと言って特に気負わずに。普段通りのプレーが出来れば良いかなって思っています」
プロ10年目の33歳。
昨年も監督推薦でオールスターゲームに選出され、初出場が内定していたが、直前の試合で右手人差し指を骨折し、やむなく出場を辞退していた経緯があった。
そこから復帰して1年越しの球宴出場。プロ入りからほぼ毎年苦しんできた故障のいきさつと併せて書けば、少しは美談にも仕上がるはずだ。
しかし……荻野はそうした空気になるのを嫌うかのように、普段通りの自分であることを強調する。今年のオールスターゲームに臨む。そこが彼の目標でもなく、終着の場でもないからだ。
前半戦をパ・リーグトップの打率.330で折り返した。それについても特別な感情はない。
「本当になんもないんですよ(笑)。打率は日々変わるモノですし……。その日(結果が)どうとかも全く考えていないです」
視線はもっとその先へ。普段と変わらぬ人当りの良い笑みを浮かべてそう返した。
リーグを代表するリードオフマンのはずなのに。
これまでのプロ10年間の通算成績はこうだ。
679試合出場、打率.278、186打点、27本塁打、191盗塁。
リーグを代表するリードオフマンであることは、誰もが認めるところだ。それでも彼の探求心は尽きることがない。
2017年のオフには、ある陸上競技関係者に師事して肉離れなど故障防止に繋がる走りを伝授され、自身の最大の武器である「足」にさらなる磨きをかけている。
「自分でも走り方がちょっと良くないかなと思っていて、そこが相手の先生との考えと一致したといいますか……怪我に繋がるような(これまでの)走り方をちょっとでも改善して、良い方向に変えていけたらと思いまして、話を聞かせてもらいました」