野球クロスロードBACK NUMBER
楽天・三木谷オーナーの打診で改名。
「卓丸さ~ん!」が増した逞しさ。
posted2019/02/20 10:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
「タクマルさ~ん!」
キャンプ地に訪れたファンに声をかけられる。ランチ後や練習後のサインや写真撮影などの“神対応”は昨年も同じだったが、今年はその数が格段に増えたように思える。
「どうなんすかね? わかんないっす。でも、名前を覚えてもらって嬉しいです」
入団5年目。22歳の顔がほころぶ。
今年から登録名が「卓丸」に変わった。
苗字の「八百板(やおいた)」も全国的には珍しいが、確かに卓丸のほうがインパクトはあるし、認知されやすい。
卓丸と名付けたのは野球好きの父親だった。
当初は満にしたかったという。というのも、1歳上の兄の名は飛馬で、野球マンガ『巨人の星』の主人公・星飛雄馬に由来する。そこで父は、星のライバルである花形満の名を弟に授けようとしたそうだが、さすがにそれはありきたりだと判断。自身がファンだった巨人の江川卓と、野球のボールを想起させる文字を繋げ「卓丸」と名付けた。
「来年から『卓丸』にすれば?」
登録名の変更とは、プロ野球選手にとって大きな転機である。
イチローが象徴するように、名字ではない登録名でブレークした選手は少なくない。楽天で言えば、銀次がそうだ。
八百板から卓丸へ――打診をしたのは、楽天の三木谷浩史オーナーだった。昨年8月。八百板は、二軍球場での試合を視察に訪れたオーナーから告げられた。
「来年から、『卓丸』にしたほうがいいんじゃないかな?」
それは、彼にとっても願ったり叶ったりの要請だった。
「珍しい名前だと思うんですけど、小さい頃から自分の名前は好きだったし、プロになってからもいろんな人から『卓丸にしたほうがいいんじゃない?』って言われていたんで。本当にいいタイミングでオーナーから提案していただいたなって」