スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
サイ・ヤング賞と謎の記者投票。
採点競技と共通する“主観”。
posted2016/11/26 07:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AP/AFLO
2016年の大リーグが終わった。カブスのワールドシリーズ制覇という歴史的な事件が最終章に用意されたこともあって、記憶に残るシーズンとなった。
個人タイトルや各賞の行方もすべて決まった。大方は本命に落ち着いたが、思っていた以上の接戦が繰り広げられたケースもある。
たとえば、ア・リーグのMVP争い。これは、全米野球記者協会(BBWAA)の記者30名が10人を連記する(1位=14点、2位=9点、3位=8点、以下1点ずつ減って10位=1点)方式で決まる。
ご承知のとおり、受賞者はマイク・トラウトだったが、2位ムーキー・ベッツとの差は45点しか開かなかった(356点対311点)。3位ホゼ・アルトゥーベ(227点)の票が意外に伸びなかったこともあって、結果的にはふたりの一騎打ちとなった。
ベッツの獲得票の内訳は、1位=9人(126点)、2位=17人(153点)、3位=4人(32点)。トラウトのほうは、1位=19人(266点)、2位=8人(72点)、3位、5位、7位=各1人(18点)。パワーもスピードもすぐれた同型の選手だけに、ベッツとしてはどこか飛び抜けて異質の個性を示したかったところだ。
ア・リーグのサイ・ヤング賞争いは大接戦に。
トラウトは、25歳にして早くも2度目のMVP受賞だ。バリー・ボンズ(ナ・リーグで7回受賞)に並ぶのは大変かもしれないが、ジミー・フォックス、ジョー・ディマジオ、ヨギ・ベラ、ミッキー・マントル、アレックス・ロドリゲスが達成した3回受賞(ア・リーグ最多記録)に追いつく日は、そう遠くないと思う。
さらにきわどい争いとなったのは、ア・リーグのサイ・ヤング賞だ。受賞したリック・ポーセロの獲得ポイントが137で、2位ジャスティン・ヴァーランダーが132。受賞者争いに絡んでくると思われたもうひとりの候補コーリー・クルーバーは、98点と意外に伸びなかった。