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「強化費はマイナス5億円」バドミントン協会はなぜ追い込まれたか? 渡辺勇大「日本代表の内定を辞退いたしました」異例の声明で浮き彫りになった課題―2025上半期 BEST5
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/08 06:00

1月29日に渡辺勇大が発表した「日本代表辞退」を考える
それでも国際大会に出場しなければならない理由
渡辺は所属企業を持たない。同じ自費でも、所属先が負担してくれるのとは異なる。まさに自費で賄うしかないが、おのずと限界もある。だから、辞退する道を選んだ。
「日本代表としての活動は、ユニフォームやプロパティ等様々な制約があります。
目指す指標が不明瞭なままこの制約を受けるならば、遠征費を捻出するために少しでもメディア、スポンサー露出やスポンサー活動、国内外イベントに参加できるよう、動きやすくしておいた方がよいと考え、今回は辞退という決断をいたしました。」
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バドミントンに限らず、企業など所属先の支援あってこそ、という競技は少なくない。
例えばパリ五輪フルーレ女子団体で銅メダルを獲得した宮脇花綸も、海外遠征はたいがい自費であり、所属先の支援で成立していることを明かしている。
バドミントンもフェンシングも、五輪代表などを目指すにあたって世界ランキングが重要な競技だ。国際大会に参加し続けなければならない競技事情もかかわっている。
浮き彫りになった「所属先と協会」の抱える課題
もう1つ浮かび上がるのは、所属先の重要性であり、失えばただちに競技生活の続行が困難になるということだ。かつてスキー・ジャンプの選手、いや選手ばかりではない、同じ所属先にいた日本代表の監督も選手とともに支援を打ち切られ、選手はなんとか競技を続けられたが、監督はやめざるを得なかった過去がある。
所属先の存在の大きさがそこにあり、同時にこれも以前から指摘されていることだが、協会がいかに自立した組織として大きくなれるかという課題もあらためて浮き彫りになる。
渡辺は言う。
「次世代を担う若い選手たちにも平等にチャンスが与えられることが理想ですが、今回の選択がバドミントン選手としての価値や選択肢を広げていく良い機会・後輩へのヒントになればと捉え、前向きに進んでいこうと思います。
自分自身まだまだ成長できると信じていますし、強くなりたいという思いは日々増しています。これからも頑張りますので、今後ともご指導ご鞭撻をよろしくお願いします。」
さまざまな課題を示した今回の件にあって、渡辺は前を向いている。
