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「強化費はマイナス5億円」バドミントン協会はなぜ追い込まれたか? 渡辺勇大「日本代表の内定を辞退いたしました」異例の声明で浮き彫りになった課題―2025上半期 BEST5
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/05/08 06:00

1月29日に渡辺勇大が発表した「日本代表辞退」を考える
東京五輪前と比べると国からの助成金自体が減っていた。輪をかけたのが、2022年に発覚した元職員の横領事件だ。それに対するペナルティとしてさらに減額。2022年度の赤字に続き、2023年度は大幅な赤字が見込まれるほど追い込まれた。その危機にあって企業からの寄附や協賛金などが相次ぎ赤字幅を圧縮、1億円強の赤字におさえることができた。
とはいえ赤字は赤字だ。2024年度は黒字化を期して予算が組まれた。結果、強化費は約8億円から約3億円に大幅に削減された。
その影響は大きかった。昨年6月には前日本代表の朴柱奉ヘッドコーチが、代表合宿が大幅に縮小されたことなどを明かしている。
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それでもパリ五輪までは出来得る範囲で強化を図ったが、限られた予算の中でのことだから、反動は訪れる。五輪後、選手は自費で海外遠征に出ざるを得ないケースが増えた。
そして2025年度にあたり、日本代表の枠組みも変わることになった。
主要国際大会に出場するA代表、それ以外のB代表としていたがそのカテゴリー分けを廃止。2024年11月に世界ランキング15位以上だった選手を対象とする「トップコミットメントプレーヤー」を新設。計41名の代表選手中、その対象は全種目合わせて計12名となり、彼らを中心に主要国際大会に派遣されることになった。
「五輪メダリストでも自費で遠征」という厳しい現実
また、協会派遣以外の選手は、日本代表選手だとしても自費による派遣となることも明かされた。
そこに渡辺の事情もかかわってくる。渡辺はこう説明している。
「2025年日本代表は、協会派遣とそれ以外に区分されました。協会派遣から外れると所属チームや選手個人が遠征費用を負担する必要があり、協会派遣選手は年数回見直される予定とのことですが、具体的な時期等は決まっておらず、状況により入れ替えがない場合もあるとのことでした。
今回の代表内定通達の際、日本バドミントン協会から私は協会派遣の対象にならないと通達がありました。
私は2022年4月よりプロ選手として活動しています。そのため、多くの選手は所属先が遠征費を負担するのに対して、自分自身で遠征費を捻出する必要があります。
パリオリンピックが終わって以降多くの国際大会を自費負担しており、実際にかかる金額を目の当たりにして活動を続けていくだけでも大変だなと感じています。」