Number Web MoreBACK NUMBER
「最後、1年でいいから同じチームでやりたかったな」戦力外通告、元阪神・北條史也からの電話…ロッテ・田村龍弘の告白「親が悲しんでましたね、幼なじみなんで」―2025上半期 BEST5
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/28 06:00

ZOZOマリンスタジアムでNumberWebのインタビューに応じた千葉ロッテ田村龍弘(30歳)
「僕は、だから、プロでバッティングで勝負しなかったということですね。守備で生きていこうと決めたから、こうやって長くできてるんじゃないですか」
言葉の意味をすぐには飲み込めず「そういうことなんですか……」と何とか反応する。
「じゃないですか。普通に。しかないと思いますけどね」
ADVERTISEMENT
一つひとつの言葉がずしりと響く。
「これは僕の経験上ですけど、諦められるやつが(プロで)活躍するんですよ。プライドを捨てて。もちろん、ある程度のプライドは必要ですけど。高校とか大学の変なプライドを捨てられずにやってしまって、なかなか芽が出ないという選手が多いんですよ。絶対。名前は出せないですけど、ロッテにもいると思うし。だから、変わらないといけないんですよ」
「僕は諦めて、森はそのまま行った」
ただ、そこまで一気にまくし立てると、田村はふいにある選手の名前を挙げた。
「僕が知ってる限り、高校のときからのスタイルを変えずに活躍しているのは森友哉(オリックス)だと思います。ほんまに、プロに入ってもそのまんま。高校のときは、僕も森もバッティングのレベルは変わらなかったと思うんですけど。僕は諦めて、あいつはそのまま行った。僕には貫けなかっただけやと思いますけど」
森は田村の1学年下だが小・中学時代は同エリアの野球チーム同士で鎬を削り、2012年のU18代表でチームメイトにもなった間柄である。田村が右打ちで、森は左打ちという違いはあるものの、ミート力が抜群で、小柄なのに長打力があり、1本足打法で、さらにはいかにも向こう気の強そうな面構えをしている点など、2人はまるで鏡で映し合ったかのように共通点が多かった。
貫いていたら――。そう尋ねると、こう打ち消した。
「もしかしたら、もう終わってるかもしれないし、もしかしたら、高校のときみたいに打ててたかもしれない。可能性は低いかもしれないですけど。でも、打てている自信はないですけどね、正直」
間を少し置き、もう一度、仮定と否定を繰り返した。
「……だから、まあ、もう一度やり直すとしたら、プロに入って、高校のときのまんまやってみたら、どうだったのかなと思ったことは何回もありますけど。でも守備で生きていこうと決めて、ここまでやってこれたので後悔はしてないですけどね。ぜんぜん」
「キャッチャーは好きじゃないんですよ、ほんと」
田村の入団1年目に監督が西武の黄金時代を支えた名捕手の伊東勤に代わり、同時にコーチとして闘将・星野仙一の寵愛を受けた元中日の中村武志が入団。田村は2人にとことん鍛えられたのだという。