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藤浪晋太郎“じつは5年前に伝えていた”メジャー挑戦の意思「阪神で1.5軍の選手だったのに…評価された」マリナーズ関係者も衝撃“フジナミの可能性”
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/29 11:08

2022年10月、ポスティングシステムによるメジャー挑戦を表明した藤浪晋太郎
「球速に関しては、こっちでも速い方かなと思いますね。こっちの人は、しょっちゅう『おまえはナスティー(nasty)だ』って言うんですよ。エグいんだから、って」
nastyとはスラングで、シンプルに訳すと「すごいやつ」という意味だが、そこに自ら「エグい」という訳語を当てるくらいに藤浪の自信は回復していた。
「こっちの人はいいところを拾ってくれる。すごいプラス思考。打たれてもストライクゾーンにアタックできていれば『グッジョブ!』って言ってくれるんです。フォアボール? なんでそんな悪いとこに目を向けるんだ、っていうスタンスなので」
「ストライクにアタックする」真意
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ストライクゾーンにアタックする。キャンプ中、藤浪が繰り返し口にしていたフレーズでもある。
なんと的確なアドバイスなのだろう。そもそもストライクが入らない投手にストライクを入れろというのは無理がある。入れたくても入らず困っているわけだから。
藤浪の出番は、5回表に巡ってきた。1度だけ右打者の頭部付近にボールが抜け、打者がひっくり返るシーンがあったが、1回を投げて2奪三振、1四球で無失点に抑えた。藤浪らしいと言えば藤浪らしい出来だったが、本人はこう不満を口にした。
「もっとやれるかなと思う。ブルペンでの状態もいいんで。結果自体はそんな悪くなかったですけど、もうちょいやれたのになっていう感じがあって」
己の身体を完全にコントロールできない自分にもどかしさを覚えているようだった。
藤浪は両腕を横に広げると、右手の指先から左手の指先まで208cmもある。藤浪のフォームを見ていると、紐の長過ぎるでんでん太鼓を見ているようだ。うまく腕を繰ることができれば誰よりも強く、いい音が鳴る。しかし、少しでもバランスを崩すと紐が緩み、太鼓の芯を外してしまう。
藤浪だけが知る“身長197cmの苦悩”
藤浪は小学校を卒業するとき、身長はすでに180cmに達していた。当時の集合写真を見ると1人だけ頭1つどころか2つぶんくらい抜けている。
「将来、2mを超えるのかなとか思ってました。それはちょっと嫌だなと思ってたら、手前で止まりましたね」
大きいのは藤浪家の遺伝なのだという。
「父が185cmあって、母が162、3cmぐらいですかね。でも、197cmにまでなるかっていう掛け合わせですよね。弟は192cmぐらいで止まりました。何を食べたらそんな大きくなるのとかよく聞かれましたけど、食べたものは普通でした。普通の家庭だったんで」
素朴な疑問だが、180cmの小学生が電車に乗るとき自動改札機を子ども料金で通過できるものなのだろうか。