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藤浪晋太郎“じつは5年前に伝えていた”メジャー挑戦の意思「阪神で1.5軍の選手だったのに…評価された」マリナーズ関係者も衝撃“フジナミの可能性”
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byJIJI PRESS
posted2025/03/29 11:08

2022年10月、ポスティングシステムによるメジャー挑戦を表明した藤浪晋太郎
そして、2023年年明け、藤浪はアスレチックスと単年で325万ドル(約4億3900万円)という阪神時代のもっともよかったときをはるかに上回る契約を勝ち取った。
「2022年の後半がよかったので、それに投資してくれたんでしょうね。日本でも1.5軍みたいな選手なのに。日本とアメリカでは評価の仕方が違うんでしょうね。アメリカはポテンシャルさえあれば、ぽんと(給料を)あげちゃう文化なんで」
現地で見た“あるルーティン”
奇妙なルーティンだった。
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藤浪はセットポジションに入る前、必ず膝を軽く曲げながら左右の股関節を内側に絞るような動作を入れた。そうすることでフォームがしっくりくるのだという。
インタビューの2日前、藤浪はピオリアで行われたダイヤモンドバックスとのオープン戦で今季初となる実戦登板のマウンドに上がった。
今シーズンの藤浪はまだマイナー契約で、キャンプも「招待選手」として参加していた。そのためオープン戦とはいえ、藤浪にとってはすべての登板が生き残りをかけた勝負の場だった。
序盤、藤浪はレフト後方のブルペン脇で待機していた。4回表が終わると、ブルペンコーチから「フジーッ!」と声がかかる。藤浪がいよいよブルペンに入った。
神経とは折り紙の折り目のようなものなのだろう。いったん強く折ってしまうと、違うところを折ろうとしても、どうしても最初についてしまった強い折り目の方に引っ張られてしまう。
くねっとしたルーティーンは、ここの部位を使って投げるんだぞと自分の体に言い聞かせているようでもあった。おそらく藤浪の体にはいくつもの誤った「折り目」が今も残っているのだ。
マリナーズ関係者も驚き「おまえはエグい」
今、マリナーズの投手陣は30球団中、ナンバー1とも言われている。ただ、そんな投手陣の中にあっても、藤浪がブルペンで投げ込み始めるとコーチ陣や同僚の投手から「オーッ!」と感嘆の声がもれた。
藤浪は気後れすることなく話す。