第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

〈駒澤大学〉「箱根駅伝では必要ならどの区間でも走る」最優先はチームの勝利と断言する、大学長距離界のエース・篠原倖太朗(4年)の矜持

posted2024/12/26 10:00

 
〈駒澤大学〉「箱根駅伝では必要ならどの区間でも走る」最優先はチームの勝利と断言する、大学長距離界のエース・篠原倖太朗(4年)の矜持<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

全日本駅伝は悔しさの残る起用のされ方だったが、ライバルを抑えて見事区間賞を獲得した

text by

加藤康博

加藤康博Yasuhiro Kato

PROFILE

photograph by

Yuki Suenaga

 高校時代の5000mベストは14分36秒11。2020年の全国高校陸上競技大会1500mで3位に入った実績はあったものの、駒澤大学入学時点の篠原倖太朗(現・4年)は決してスペシャルな存在ではなかった。だが明るい性格と陸上競技に対しての真摯な姿勢は目を引いた。2021年春の入学直後にこんな言葉を発していたことが思い出される。

「駒大は箱根駅伝で優勝するチームだけあって、ピリピリするような緊張感の中で練習していて本当にすごいんです。練習が終わると先輩たちは優しく接してくれますし、ここならば自分は絶対に強くなれます」

 目を輝かせて自分の未来は明るいと語っていた18歳の少年は今、大学長距離界のエースと呼ばれる存在となり、最後の箱根駅伝を迎えようとしている。

 篠原の入学後の成長はまさに加速度的だった。5000mのベストタイムはすぐに13分台に突入し、1年時に関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)の同種目で2位となった。このシーズンの箱根駅伝はケガにより出場できなかったものの、2年時には日本学生陸上競技個人選手権5000mで優勝し、日本陸上競技選手権にも出場。全日本大学駅伝と箱根駅伝に出場して駒大の学生駅伝三冠奪取に貢献し、直後の香川丸亀国際ハーフマラソンでは日本選手の学生最高記録を更新した。3年時はFISUワールドユニバーシティゲームズにハーフマラソンで出場し、箱根駅伝では1区で区間賞をつかんでいる。

距離を問わず結果を残し続けるランナー

 そして今季は5000mで13分15秒70の日本選手の学生屋外最高記録を樹立。10000mも日本選手の学生歴代5位記録となる27分35秒05で走った。5000m、10000m、ハーフマラソンとマルチに結果を残すその存在感は圧倒的だ。

「先輩の田澤(廉)さん、(鈴木)芽吹さん(ともに現・トヨタ自動車)と一緒に練習し、背中を追いかけてきたことで強くなれたと思います。ただ、タイムではふたりに近づいてきましたが、まだ勝てないだろうと思うことが多いです。それは練習での余裕度がぜんぜん違うから。自分がやる前から構えてしまうようなメニューでも、田澤さんたちはリラックスして受け止め、軽々とこなしてしまうんです。まだ力の差はあるので、もっと頑張らないといけないですね」

 駒大の大八木弘明総監督が設立した世界を目指すアスリートプロジェクト「Ggoat」に参加し、田澤や鈴木と日常的に競い合いながら強化を進めている。大学長距離界のエースとなった今、目指すのはさらに上のステージ。「強くなりたい」という篠原の意識は入学時よりも強くなっている。

 駅伝への思いも強い。今季は駒大の主将に就き、チームを牽引する覚悟を決めた。夏はGgoatの海外合宿ではなく大学の夏合宿全日程に参加し、駒大のエースとして不動の存在になることを自分に課してきた。

「春の時点でチーム状況があまり良くなかったので、夏合宿では自分が後輩たちのために引っ張る役目を務めようと決めたんです。これまでの駒大のエースは出雲駅伝は6区、全日本大学駅伝は7区、そして箱根駅伝は2区というエース区間を担い、不動の存在としてチームを勝たせる存在でした。自分も今年はそうなりたいと思っています」

【次ページ】 すでに見据える世界への挑戦

1 2 NEXT

ページトップ