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〈山梨学院大学〉昨季の箱根駅伝は繰り上げ出発…屈辱がもたらした、日本人エース・平八重充希(3年)の飛躍

posted2024/12/17 10:01

 
〈山梨学院大学〉昨季の箱根駅伝は繰り上げ出発…屈辱がもたらした、日本人エース・平八重充希(3年)の飛躍<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

大崎監督に日本人エースとしての期待をかけられる平八重(左)。1区でその力を発揮できるか

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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Nanae Suzuki

 改革の芽が、1年も経たないうちにすっくと伸びた。

 前回の箱根駅伝で最下位の23位に沈んだ山梨学院大学。今回の予選会も厳しい見方があったが、堂々と3位で通過を果たした。采配を振るったのが、今年4月に就任した大崎悟史監督だ。

 自身もかつて山梨学大のエースとして活躍。卒業後は実業団チームのある企業に入社するも会社都合でチームが同好会となり、その後は一般社員として市民ランナーからマラソンの北京五輪日本代表にまで上りつめた苦労人である。2016年4月から山梨学大のコーチを務めてきたが、監督になって何を変えたのだろう。

「ジョグのペースを速くしたり、あえて練習ではなく補強だけの日を作ったり、まずは自分の引き出しの中から良いと思ったものを選手に伝えました。やらされるのではなく、なるべく学生たちが自主的に動いてくれたら良いなって。練習はもう十分やっていたので、むしろ質を高めていく方向にシフトしました」

 量を求めない練習に当初、選手は戸惑いを見せたという。しかし、トラックシーズンに入ると髙田尚暉(4年)が3月の世界クロスカントリー選手権の日本代表に選ばれ、関東学生陸上競技対校選手権ではブライアン・キピエゴ(2年)が大会新のタイムを記録してハーフマラソンで優勝するなど、取り組みの成果が徐々に形となって現れてきた。

悔しさがもたらしたターニングポイント

 6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会は10位で予選落ちしたが、この試合こそがターニングポイントだったと大崎監督は振り返る。

「最終組で落ちましたけど、前半は通過ラインを維持するレースができました。そしていざ落ちたら、選手がすごく悔しがっていたんです。ある程度の手応えを感じつつ、相当な悔しさも覚えた。この辺りからまたちょっと雰囲気が変わってきましたね」

 チームの積年の課題は後半のスタミナ不足と、留学生ランナーに次ぐエースの不在だった。その弱点を克服すべく、夏合宿ではみなが危機感を持ちながらハーフの距離をしっかりと走りこんだ。また、ここに来て待望の日本人エースも生まれつつあるという。

 監督がエース格として名前を挙げるのが、3年生の平八重充希だ。11月9日の10000m記録挑戦競技会で28分39秒の自己ベストをマーク。主将の村上大樹(4年)を3秒抑え、その組のトップを奪った。

「内容が良かったですよね。狙ってほしいレースで、しっかりと記録も出して先頭でゴールした。平八重は補強も自ら考えてやりますし、安定感が出てきたのが頼もしい。箱根駅伝の1区とか、往路の重要な区間を任せられる力がついてきたなと思います」

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