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悔しい敗戦も「楽しい大会」…“驚異の16歳”張本美和が早田ひな、平野美宇、そして兄に支えられて見据えた、中国との激闘の「4年後」
posted2024/08/12 17:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
言葉には悔しさがあった。でも初めての大舞台を終えた張本美和の表情は、悔しさだけでない大きな糧を得たかのようだった。
8月10日、卓球女子団体決勝の中国戦。第1試合、張本は今大会で初めてのダブルスに早田ひなと出場した。
「張本美和選手と組むのは公式戦では初めてと言っていいくらいです」
早田が言うように、意表を突いた起用に張本は応えた。2人は先手先手をとり、強豪相手にフルゲームに持ち込む。第5ゲームも9-5と勝利に迫った。だがそこからの中国は強かった。5点連続でポイントを失い、最後は10-12と逆転で敗れた。続く第2試合のシングルスで平野美宇が敗れる。第3試合のシングルスに再び出場した張本も敗れ、打倒中国は果たせなかった。
試合を終えて、張本は言う。
「負けて悔しいです。自分の持っているものは出し切ることはできたと思います。でもまだ足りなかったということで悔しいです」
全選手中最年少が示した存在感
16歳1カ月は今回の五輪に出場した卓球全選手で最年少だった。しかし大会を振り返れば、年齢を感じさせず、その存在感は鮮烈だった。中国との団体戦でダブルスにも起用されたのも、準決勝まではシングルス2試合を任されたのも、張本の実力への信頼あってのことだ。
五輪デビュー戦となったのは団体1回戦、ポーランドとの試合。第2試合に登場すると、3-0で快勝する。準々決勝、タイ戦でも第2試合で3-0と完勝しチームの準決勝進出に貢献した。
初めてつまずきを見せたのは準決勝ドイツ戦だった。第2試合のシングルスでサウスポーのアネット・カウフマンを攻略できず、今大会で日本チーム初の黒星。それでも第4試合を3-0で勝ち、チームの勝利を決めた。
ひとつの敗戦はあったものの、信頼に応えて堂々たるプレーを大舞台で披露した。
そこには大きな後押しが、支えがあった。
象徴的なシーンが、準決勝だ。重圧を感じる中で第2試合に敗れたあとはさらに追い込まれた。
「気持ちを切り替えられるかすごく苦しかったです」