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日本記録を3分以上更新の衝撃。サロマ湖100kmウルトラマラソンを制した山口純平とは何者か?

posted2023/08/28 11:00

 
日本記録を3分以上更新の衝撃。サロマ湖100kmウルトラマラソンを制した山口純平とは何者か?<Number Web> photograph by HOKA/GOAT inc,

text by

千葉弓子

千葉弓子Yumiko Chiba

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HOKA/GOAT inc,

「うぉ~~!」

 6月25日、第38回サロマ湖100kmウルトラマラソンで山口純平は雄叫びを上げながらゴールテープを切った。6時間6分08秒という日本新記録を打ち出した後、感極まり大粒の涙を流す山口。100kmマラソンでは5年ぶりの日本記録更新となり、世界記録(承認前)ともわずか33秒差というタイムだった。

 コロナ禍による中止を経て4年ぶりに開催されたサロマ湖100kmウルトラマラソンは、1986年に創設された歴史ある大会だ。100kmレースとしては数少ない日本陸連公認大会のひとつで、世界選手権代表の選考レースでもあることから、「サロマ」という響きはウルトラランナーにとって特別な意味を持つ。2018年に風見尚が打ち出した前日本記録(6時間9分14秒)も、1998年に砂田貴裕が樹立した当時の世界記録(6時間13分33秒)もサロマが舞台だった。

 山岳分野から誕生し、エンデュランス系ランニングに向けたシューズ開発をブランドオリジンとするHOKAは、2019年からこのサロマ湖100kmウルトラマラソンに協賛している。さらに今年は、5月に開催された柴又100Kと本大会を対象に「HOKA100km世界記録チャレンジ」も実施。賞金の授与や製品提供などを通して選手の競技活動を支援することで、ブランドとしてウルトラマラソンの世界そのものを盛り上げたいという想いを抱く。今後も引き続きウルトラマラソンをサポートしていく予定だという。

 山口純平も1年前からHOKAの愛用者だ。今回のサロマには「ROCKET X 2」を履いて臨んだ。山口に記録更新の要因や競技生活、シューズの印象などを聞いた。

ゴール間際、ふと気づいたら日本新記録だった

――まずは日本記録更新おめでとうございます。

山口 ありがとうございます。

――5月に開催された柴又100Kでは87kmでリタイアされたとか。サロマ出場にあたって不安はありませんでしたか。

山口 柴又では暑さによる手足の痺れで救護からストップがかかり棄権しました。大会直後はちょっと落ち込んだんですけど、意外と早く切り替えられました。70km過ぎまでは世界記録のペースで走れていたので、多少の手応えも感じていて、サロマ出場への不安はなかったですね。

――サロマに向けてあらためて準備したことはありますか。

山口 とくに変わったことはしなかったです。これまで100kmは河川敷や周回路など単調なコースしか走ったことがなく、サロマは景色もきれいでアップダウンもあるコースだと聞いていたので、とにかく楽しみたいなと思って臨みました。

――どのあたりから記録が狙えそうだと感じましたか。

山口 実は行けるっていう感覚は全然なくて。後半になって、柴又での棄権が頭をよぎり、大失速だけはしないようにとペースを抑え気味に走りました。だからゴールが見えたときは、あとちょっとで終わるんだと思ったくらいです。

――補給ではどんな工夫をされましたか。

山口 柴又ではスペシャルドリンクを取り損なってしまったので、それだけはしないように気をつけました。通常100kmレースではエイドでカップを2個取り、ジェルを約10kmにひとつのペースで摂るようにしています。サロマではスペシャルドリンクが3箇所に置けたので、各エイドにボトルを2本ずつ用意して2種類のドリンクを詰め、そこにジェルを貼り付けました。

――今回、日本記録を更新できた勝因はどんなところにあったと思いますか。

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