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「辰吉のボクシングは小学生レベル」「薬師寺にはジャブだけで勝てる」29年前“伝説の薬師寺vs辰吉”の異常な雰囲気、「辰吉ドーピング疑惑」報道まで…―2022-23 BEST5
posted2023/05/11 11:00

1994年12月4日、伝説の「薬師寺保栄対辰吉丈一郎」。中部で視聴率約52%、関東でも約40%を記録した歴史的な一戦だった
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細田昌志Masashi Hosoda
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JIJI PRESS
2022-23の期間内(対象:2022年12月~2023年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。格闘技・ボクシング部門の第2位は、こちら!(初公開日 2023年4月6日/肩書などはすべて当時)。
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視聴率54%と52.2%
筆者の友人に加藤大典というクリエイターがいる。名古屋出身の彼は「WBC世界バンタム級統一王座決定戦/王者・薬師寺保栄(松田)対暫定王者・辰吉丈一郎(大阪帝拳)」の一戦を次のように形容する。
「1994年という年は名古屋にとって凄く意味のある年でした。なぜなら、日本中で注目を集めるスポーツイベントが2つも名古屋で行われたからです。1つは10月8日の『中日対巨人』、そしてもう1つが12月4日の『薬師寺対辰吉』です。このとき僕は中学生でしたけど、どっちも市内全体が浮き足立っていると言うか、殺気立っていると言うか、街中がどうかしてましたね。電車の中でも聞こえてくるのはその話ばかりだし、ラジオをつけてもその話ばっかり。大袈裟じゃなくて本当にそうなんです。何でよりによって2つとも名古屋で行われたのか、引力だったのかも……。とにかく、ああいう出来事を同じ年に二度も経験するなんてことは、人生の中でおそらくもうないと思うんです」
彼の挙げた「10・8決戦」こと「中日対巨人」の視聴率は関東地区48.8%、関西地区40.3%、中部地区に至っては54%も叩き出した。「薬師寺対辰吉」は関東地区39.4%、関西地区43.8%、中部地区は52.2%とこちらも信じられないような数字を記録している。
「だいたいボクのパンチは痛いよ」
大衆がこの一戦に注目したのは、辰吉の高い知名度と前代未聞の経緯もさることながら、双方の舌戦も一役を買ったのは否めない。口火を切ったのは辰吉だった。
辰吉「意識していると思われることが、そもそもいやですわ。だいたいボクのパンチは痛いよ」
薬師寺「僕のパンチはカユイから心配しないでね」
辰吉「虫よけのスプレーを付けてリングに上がるから心配ないで」
薬師寺「辰吉のベルトにはちゃんと『暫定』って入ってるんでしょうね。試合までにしっかり入れといてほしい」
辰吉「薬師寺とでは東京ドームは無理。向こうがやりたいって? 自分のスケールを勘違いしてるわ」
薬師寺「本物のチャンピオンと偽物のチャンピオンの差を見せられるのが今から楽しみ」
辰吉「薬師寺のダンスは近くで見たい。今後のパフォーマンスの参考にしたいからね」
「辰吉のボクシングは小学生レベル」
これに双方のチーフトレーナーのマック・クリハラと大久保淳一までが加わった。口火を切ったのは薬師寺側のマック・クリハラである。