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「背筋も喜んでるわ」井上尚弥30歳が語る“自分の筋肉”…なぜ先輩・八重樫東にトレーニングを依頼した?「お尻がデカイとよく言われます」―2022-23 BEST5
posted2023/05/11 06:01

12月のバトラー戦で4団体統一王者となった井上尚弥。1階級上のスーパーバンタム級転向を正式表明した
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
2022-23の期間内(対象:2022年12月~2023年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。格闘技・ボクシング部門部門の第4位は、こちら!(初公開日 2023年1月15日/肩書などはすべて当時)。
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「ボコッ、ボコッと…明らかに筋肉がついた」
井上尚弥は既に1年前からスーパーバンタム級に向けての準備を始めている。元3階級制覇王者のトレーナー、八重樫東とタッグを組み、新たな階級に向けてフィジカルトレーニングを始めたのは2021年11月のことだった。4団体統一が通過点であるとの感覚はこの事実からも裏付けられる。
「八重樫さんに指導を受けるようになったのはアラン・ディパエン戦の1カ月くらい前からです。バンタム級で戦うためのトレーニングではありません。スーパーバンタム級で戦うための準備だったんです」
現役時代“激闘王”と呼ばれた同門の先輩にトレーニングを頼んだのは、八重樫のボクサーとしての経験を信頼していたからだ。体作りのコーチとして八重樫よりもキャリアを積んだ人材はいくらでもいる。一方で元トップボクサーであり、階級の上げ下げを経験し、なおかつ井上のことを若いときからよく知る者といえば八重樫しかいない。こうして始まった通称“八重トレ”は今のところズバリとはまっている。
「八重トレの成果が目に見えて表れたのはノニト・ドネアとの第2戦(22年6月)です。計量のときに自分の体を見て、明らかに筋肉がついたと分かりました。全体的にボコッ、ボコッという感じです。八重樫さんに見てもらうようになって試合ギリギリまでフィジカルをやるようになった。だいぶ変わったと思います」
「下半身は大事。お尻がデカイとよく言われます」
半年、1年という短いスパンでの成長には驚くばかりだが、言うまでもなく井上は何もゼロから八重トレを始め、肉体を変貌させたわけではない。小学1年生でボクシングを始め、技術練習に加えて自動車を押したり、ロープを両腕だけで登ったり、体を鍛えるトレーニングもした。21歳のときにはプロの体を作るべく、本格的にフィジカルトレーニングを導入している。
なぜ井上はあれだけ圧倒的な強さを誇示することができるのだろうか。ここからモンスターの肉体の秘密に少しでも迫ってみようと思う。
まずはパンチ力だ。バタバタとトップ選手をノックアウトする破壊力の源は体のどの部分にあるのだろうか。質問をぶつけると、井上は少し首をかしげ、よく考えてから次のように答えた。