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女子ケイリン・ネーションズカップ優勝の佐藤水菜(24歳)の野望は世界女王を倒しての金メダル「2024年まで気を休める暇なんて1ミリもない!」

posted2023/03/17 12:00

 
女子ケイリン・ネーションズカップ優勝の佐藤水菜(24歳)の野望は世界女王を倒しての金メダル「2024年まで気を休める暇なんて1ミリもない!」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

「クールな表情は苦手」と話す佐藤水菜はガールズケイリンと自転車競技ナショナルチームの活動を両立する

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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Kiichi Matsumoto

 ガールズケイリンでは昨年27戦25勝と圧巻の強さを見せ、自転車競技では日本代表として世界の強者たちと対峙する佐藤水菜。2年連続で世界選手権で銀メダルを獲得している彼女にとって、今も忘れられないレースがある。

 2021年世界選手権女子ケイリン決勝。

 2024年パリオリンピックへ向け新たな船出となったこの大会で、佐藤は日本人史上初の女子ケイリン決勝進出の快挙を成し遂げる。しかも初出場で、女子短距離種目では初となる銀メダル獲得だ。佐藤にとってはもちろん、日本代表にとっても大きな一歩となった。

 ただ、先につながると分かっていたからこそ、このメダルの意味を痛いほど感じていたのが佐藤だ。3年後に控える大舞台――。「うれしい」よりも「悔しい」気持ちが上回った。世界のトップ選手と自分との小さくはない距離を感じたからだ。

 この種目で優勝したのは、ドイツの現・世界女王だった。

「前に(リー ソフィー・)フリードリッヒがいたのですが、私は3周とも彼女につきっぱなしで。しかも最後さすことができなかった。普通に考えたら、先行する選手の脚がいっぱいになって番手にさされるという展開が多いんですけど、あの時はむしろフリードリッヒに引き離されるような感じさえありました。まったく歯が立ちませんでしたね」

佐藤の自己分析「追われるより追うのが好き」

 口をついて出るのは反省の言葉ばかりだ。しかし、この敗戦を機に、佐藤の練習に対する意識は大きく変化したという。

「一番きついと言われる750mシッティング(サドルに座って漕ぐ)全開の練習もまったく苦じゃなくなりましたね。男子選手と走るときも、“この選手に勝たないと彼女には勝てない”いうくらいの気持ちを持って練習するようになりました」

 自己分析によれば、「追われるより追うのが好き」。目の前により大きな存在や倒したい相手がいるほうが断然燃えるタイプだ。

 振り返ると2020年夏にパリオリンピックに向けたナショナルチームに入った当初から、佐藤は必死に周りを追い続けてきた。

「梅川(風子)選手と同時期に代表入りしたのですが、同じスターラインにいたはずなのに、梅川選手はいつのまにか自分の遥か上にいて。追いつくのに必死だったし、その後もいつも上には上がいるというプレッシャーもありました。とにかく国際大会に出るまでは不安で。強豪国が不参加の大会で表彰台に立てなかったときも焦りましたし、その後は世界選手権のメンバーに選ばれなければ……というプレッシャーを感じました。自分がどこまで世界で通用するのか分からなかったので、初めての国際大会のレースを走り切るまではプレッシャーや緊張感は相当のものでしたね」

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