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《日常にもっとモータースポーツを!》現役プロドライバーとGRカローラ開発エンジニアが語る、クルマを操る喜びと未来
posted2023/03/09 10:00

カローラスポーツを基本骨格とし、GRヤリス同様の1.6Lターボエンジンを搭載、さらに32PSのパワーアップを達成するなど大幅な走行性能の向上を果たしたGRカローラ
text by

渕貴之Takayuki Fuchi
photograph by
TOYOTA MOTOR CORPORATION
近年のトヨタを象徴する「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」。その言葉はスポーツカーだけでなく、カローラなど一般的なクルマにも反映され、市販車のラインナップにはクルマ好きの心に刺さるモデルが数多く用意されている。とりわけ、つくり手の思いが純粋に結実したのが「GR」シリーズである。
GRとはトヨタが2017年から展開し、WRC(世界ラリー選手権)やWEC(世界耐久選手権)など、世界のモータースポーツに参戦するTOYOTA GAZOO Racing(TGR)が培った技術と情熱を惜しみなく注ぎこんだスポーツカーブランドだ。
そのGRのWEBサイトを覗けば、トップページにこういう言葉がある。
いいクルマとは何か。そこに明確な答えはない。しかし、私たちは一つの条件として“ 走りたくなるクルマ”だと考える。
(中略)
街を走るのに、レースに勝つ速さは必要ない。だが、レースに勝てるクルマは安全でドライバーを疲れさせない。何よりも乗っていて楽しい。圧倒的な安心感と快感のあるクルマ。もっと走っていたいと思うクルマ。
いいクルマとは何か。終わりのない答えへの、挑戦を続ける。
その挑戦を体現する代表的な車種としてGRスープラ、GR86、GRヤリス、GRカローラなどがクルマ好きから熱狂をもって受け入れられている。
なかでもGRカローラはGRの最新作にして唯一4枚のドアを持つクルマで、日常での使い勝手がいい。そんなGRカローラの開発スタッフは、ユーザーの身近にあるスポーツのあり方をどう捉えているのか。GRが謳う「走りたくなるクルマ」とは、どのように開発されているのだろうか。
「GRカローラは難しいプロジェクトだった」
はじめに話を聞いたのは、チーフエンジニアとしてGRカローラの方向性をまとめ上げた坂本尚之。量産車だけでなく、現在スーパー耐久シリーズに参戦する水素エンジンカローラ(正式名称はORC ROOKIE GR Corolla H2 concept)の開発も手掛けた人物だ。
「GRカローラは難しいプロジェクトでした。同じエンジンを積んで、より軽く運動性に優れるGRヤリスが先に発売されている中、車重が重いカローラでどうすればスポーツカーと言えるクルマをつくれるか」