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「過去の自分を超えられると信じている」マラソン元日本記録保持者・Honda設楽悠太が“常勝チーム”のプライドを背負って3月の東京で復活を期す

posted2023/02/28 17:00

 
「過去の自分を超えられると信じている」マラソン元日本記録保持者・Honda設楽悠太が“常勝チーム”のプライドを背負って3月の東京で復活を期す<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

チーム最年長の31歳になった今もマラソンへの熱い思いは変わらない

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NumberWeb編集部

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Kiichi Matsumoto

 たとえるなら、長いトンネルに入っているような感覚だろうか。

 ここ数年、マラソンやトラックで結果が出ていない状況について訊ねると、設楽悠太はその理由について困惑を隠さなかった。

「ケガもしていないですし、コンディションも悪くない。ただ、練習も普通にできているのに、試合になると走れないんです。正直、その原因が何なのか、自分でもはっきりとはわかっていないですね」

 所属するHonda陸上競技部は、今年のニューイヤー駅伝で史上7チーム目となる連覇を達成した。入社3年目までの若手が伸び伸びと活躍し、チームは“常勝”の過程にある。駅伝のみならず、世界レベルで活躍する選手が多く、小川智監督を軸とした指導力は実業団の中でも群を抜く。

 だが、その優勝メンバーの中に設楽の名前はなかった。キャプテンでありながら、大事な試合に出られない。内心、忸怩たる思いがあっただろう。

2018年東京マラソンで日本記録を樹立

 設楽はこれまでチームの絶対的エースと呼ばれる存在だった。ニューイヤー駅伝ではエース区間の4区で過去3度の区間賞を獲得。2018年の東京マラソンでは2位に入り、当時の日本記録(2時間6分11秒)を樹立している。「次は5分台を狙いたい」。そう公言してはばからなかった。

 潮目が変わったのは、コロナ禍以降のことである。マラソン大会が軒並み中止となり、沿道から観客の声援が消えた。もともと練習の一環として多くのレースに出場しながら調子を上げていくタイプだっただけに、環境が変わった影響は大きかった。設楽はマイペースを貫くが、抗いきれない部分もあったのではないか。

【次ページ】 指導者と後輩の存在が挑戦する心をはぐくむ

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