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「競輪は自分の人生そのもの」ガールズケイリン1期生として10年を駆け抜けた小林莉子(29歳)の2023年を戦う最大のモチベーションとは
posted2023/02/28 15:00

取材は2012年のデビュー戦、初勝利の会場となった平塚競輪場で行なわれた
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Tomoki Hirokawa
発足11周年のガールズケイリンは2012年に日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)女子1期生33選手でスタートしたが、いまでは172選手に増加(2月22日現在)。選手層も厚くなり、年々競技レベルも向上。競輪ファンの間にもすっかり定着し、今年から新コンセプト「プロスポーツ競技のまんなかへ」を掲げ、新たなレース体系で開催される。
「人気に応えられたときはお客さんとの一体感を感じますし、レース後に『ありがとう!』と声をかけられることもあるんですよ。自分がどういうレースをしたということよりも、期待に応えられたときが、やっぱりなによりも嬉しいですよね。逆に人気になったときに負けると厳しい言葉をいただきますけど(苦笑)」
ガールズケイリンの創成期を支えた小林莉子は、「簡単には負けられない。ビッグレースには1期生がいないといけないという気持ちです」と1期生としての矜持を見せる。
2012年のデビューから11年。今も第一線で活躍し続け、業界に大きく貢献する彼女は、本業以外にも様々な取り組みでガールズケイリンの発展に尽力し、知名度アップに寄与してきた。
高校時代はソフトボールで全国ベスト8を経験し、部活引退後の進路に悩んだときにガールズサマーキャンプに参加し、自転車を極めてみたいとこの世界へ足を踏み入れた。「全く別の競技でトップを目指しているなんて、自分のなかでも想像していなかったですよ」と笑う、生粋のアスリートは自分がどこまで速くなれるのか試してみたいと好奇心をくすぐられた。
バンクでは巧みな位置取りから勝負どころを逃さず、最後の直線で抜けだすのが勝ちパターン。豊富な経験を武器に、レースの流れを読む力は随一と言われている。
太陽のような笑顔で、周りをパッと明るくする。そんな彼女は誰からも愛される存在だ。
「もう10年も経ったの? というぐらい、時間が経つのが早かったですね。選手、ファンの方々、そして業界全体に支えられて続いた10年だったと思います」
もう1度グランプリを獲りたいと思っていたが……
ただ、デビュー当初に思い描いていた理想と現実には少しギャップがあるという。「1年目に(ガールズ)グランプリを獲ったので5年以内には『もう1度獲りたい』と思っていたのですが、その目標が達成できなかった。悔しいですね。それに、もっとレベルアップしたいと考えていたところが、ちょっと追いついていないという感じです」
2012年7月のガールズケイリンオープニングレースでデビューした小林はいきなり初優勝の栄冠を掴んだ。同年12月28日には京王閣競輪場で行なわれた『第1回ガールズグランプリ(以下GGP)』で初代女王に。その競輪人生はまさに華々しい幕開けだった。
「当時はただガムシャラに戦っていたという感じで、一生懸命に走っていただけ。(GGPも)気づいたら優勝していたという感じで」
しかし、GGP優勝を境に、彼女の競輪人生は大きく変わっていくことになる。