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「なぜ離婚するメジャーリーガーが少なくない?」貧しい家庭から成り上がった名ピッチャーが明かす、野球選手の“意外に弱いメンタル”―2022下半期 BEST5

posted2022/12/31 06:00

 
「なぜ離婚するメジャーリーガーが少なくない?」貧しい家庭から成り上がった名ピッチャーが明かす、野球選手の“意外に弱いメンタル”―2022下半期 BEST5<Number Web> photograph by Getty Images

カージナルスなどで活躍した名ピッチャー、ボブ・テュークスベリー。その“華麗な”セカンドキャリアとは?

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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2022年の下半期(対象:9月~12月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。MLB部門の第5位は、こちら!(初公開日 2022年9月20日/肩書などはすべて当時)。

 野球好きにとって、素晴らしい本だ。

「投球術」のことを知りたい! と思っている人には、100パーセントおすすめ出来る。

 元メジャーリーガーのボブ・テュークスベリーと、コラムニストのスコット・ミラーによる共著、『野球の90%はメンタル』は、メンタルスキルの本であり、そしてなにより投手の「頭脳」、「発想」についてワクワクしながら読み進められる本である。

 序盤はニューハンプシャー州の貧しい家庭で育ったテュークスベリーが、どうやってメジャーリーグにたどり着いたが書かれる。野球一辺倒ではなく、父と母の不貞行為にも言及し、このあたりはトランプ支持者の背景を書いた傑作、『ヒルビリー・エレジー』を連想させる。

 テュークスベリーは1986年にヤンキースでメジャーリーグにデビューするが、1990年まではマイナー降格やブルペンに回されるなど、辛酸を舐める。彼には当時の投手に求められていた剛速球がなかったからだ。メンタルトレーニングなんて、弱さの表れだと思われていた「マッチョ崇拝」の時代、チーム関係者や監督が「次、打たれたら降格だからな」と言い渡すことがまかり通っていた時代だ。

「あの39球目は“意味のない球”だった」

 しかしテュークスベリーは、抜群の制球力とメンタルスキルで成功を収める。1992年のシーズンには233イニングを投げ、与えた四球は20個しかなかった。

「投球術」に関していえば、第6章の「『あわや完全試合』の教訓」がめっぽう面白い。

ボブ・ティークスベリーとスコット・ミラーの共著『野球の90%はメンタル』(春秋社)。日本では昨年翻訳版が出版された

 1990年8月17日、カージナルスで投げていたテュークスベリーはアストロズと対戦、7回表まで一人のランナーも出さなかった。完全試合達成まで、あとアウトを6つ取れば良い。しかし、彼は8回表にヒットを許す。打たれた理由はメンタルにあったとテュークスベリーは自己分析し、こう書く。

「あのプレッシャーから少しでも逃れたいと思った自分に不満を感じる」

 この発想も十分に興味深いが、彼はこの試合の投球をすべて記憶していて、1球ごとにその意図、意味を説明しているのだ! これは野球ファンにとって「垂涎もの」だ。たとえば、5回表のある1球について、こんな具合に書く。

【次ページ】 「あの39球目は“意味のない球”だった」

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ボブ・テュークスベリー
ジョン・レスター
ニューヨーク・ヤンキース
ボストン・レッドソックス
セントルイス・カージナルス
上原浩治

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