第99回箱根駅伝(2023)BACK NUMBER

〈第100回箱根駅伝〉で史上45校目の初出場校は生まれるか 虎視眈々と箱根路を狙う大学の現在地 

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小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/11/30 17:00

〈第100回箱根駅伝〉で史上45校目の初出場校は生まれるか 虎視眈々と箱根路を狙う大学の現在地<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

第99回箱根駅伝予選会で個人37位の結果を残した、麗澤大学の工藤大和(2年)

2、3年生を中心としたチーム作りに手応え

 番組ではたまたま監督が合宿中にココアを作っているシーンが流れたが、あれは悪影響でしたねと笑う。

「ココアを作る監督だと思われたのか、大学に来たのにココアは飲めないんですかって。あれはたまたま寒かったから作っただけで、毎日ココアを作ってくれる監督なんているわけないだろうと。あんまりしつこいからココアパウダーの袋をポンと渡して、自分で作れって言ってやりました(笑)」

 手塩にかけて育てた強い4年生がごそっと抜けた年に、彼らはルーキーとして入部してきた。その年はコロナ禍もあり、大学陸上界全体でスカウト活動が停滞したという。前々年度から足を運んだ成果で、通常通りインターハイなどが開催されていれば他校に引き抜かれていた可能性が高い。いわば「運命を感じるようなスカウト」で得た逸材であり、監督は彼ら2、3年生を中心としたチーム作りに手応えを感じている。

「本当は今年、箱根駅伝出場を決めて、来年が勝負と自分の中では考えていたんですけどね。まだ若いチームだし、今入ってきたら彼らと一緒に練習ができるよって、リクルーティングの誘い文句にもしたかった。そこも含めて残念でした」

頭の片隅に意識する指導者とは

 監督就任初年度はスカウトも現場の指導も一人で行ってきたが、5年前に原塚大貴コーチが加入し、今は役割を分担している。また、学園理事長のバックアップも大きいと話す。

「元々は麗澤大が箱根路を走る姿を見たいという理事長の願いから箱根への挑戦が始まったようで、今も変わらず応援してくれています。今年は合宿所も新しくなって、プールかって思うくらい大きいお風呂も作っていただきました。この9月には食事の業者さんも変わり、本当にご飯が美味しい。留学生もすごく明るい、性格の良い子が入ってくれたので、あとは結果を出すだけですね」

 監督には頭の片隅に意識する指導者がいるという。國學院大學の前田康弘監督だ。ある夏の日、合宿地が同じで、前田監督がふらっと現れて練習を見てくれた。そこからの付き合いで、今もっとも連絡を取り合っている仲だという。

「なんでこんなに良くしてくれるのか直接聞いたことはないですけど、監督になった年齢が同じくらいなんです。前田さんも駒澤大学から國學院大學と母校とは違うところで指導していて、私もそう。それで気にしてくれているのか……。いつも陸上の話ばかりして、一緒にいてとても勉強になります。合同練習や合宿など、上手くうち(國學院大)を利用したらいいと言って下さって。いつかその恩を結果で返したいなって思いますね。最近は特にそう思います」

【次ページ】 「最善の準備をし尽くしたチームが箱根に行ける」

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