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《ラリージャパンにも参戦!》「先駆者として僕は攻める」日本人唯一のWRCドライバー勝田貴元の挑戦 

text by

古賀敬介

古賀敬介Keisuke Koga

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photograph byTOYOTA MOTOR CORPORATION

posted2022/11/04 10:00

《ラリージャパンにも参戦!》「先駆者として僕は攻める」日本人唯一のWRCドライバー勝田貴元の挑戦<Number Web> photograph by TOYOTA MOTOR CORPORATION

今季からはハイブリッドシステムを搭載する「GR YARIS Rally1 HYBRID」で戦う勝田貴元

初の表彰台で勝田が後悔していたこと

 ステップアップ直後は速さが足りず、クラッシュも多かった。しかし勝田は、培った技術と誰にも負けない努力で着実にレベルを上げ、2021年の第6戦サファリ・ラリー(ケニア)で遂に初表彰台に立った。WRC王者に8度輝くセバスチャン・オジエという生き神的存在のチームメイトと、最後まで接戦を続けての総合2位だった。ところが、初表彰台で最上段に立てなかったことを、勝田は酷く悔やんだ。

「タイヤの使いかたなど、オジエ選手との大きな実力差を実感しました。もっともっと成長しないと優勝できないし、世界チャンピオンになるという夢も叶えられない。苦しい時期に支えてくれた人たちが喜んでくれたことだけは嬉しかったですが、自分の走りには満足できなかった。きっと、優勝したら素直に喜べると思いますが」

 ストイックに自分を追い込み続ける勝田は、ハイブリッドシステムを搭載する新規定マシン初年度の2022年、さらに大きく成長。サファリ・ラリーでは2年連続で表彰台に立った。走りの安定性は格段に高まり、どのような厳しい状況からでも順位を上げていくしぶとさも身につけた。そしていよいよ11月、母国ラリーであるWRCラリージャパンに挑む。

チャレンジプログラム1期生の義務

「生まれ育った愛知県の道を走るホームラリーなので、今シーズンの集大成として表彰台を狙って行きます。しかし、そのためにはリスクをかなりとって走らなければならないでしょう。ラリージャパンで日本人である自分が上位争いをすることが、日本でのこのスポーツの将来にとって何よりも重要なことだと思うので、最高の力を発揮できるように頑張ります。今、フィンランドで修業している若い3人や、その次の世代の人たちにも道を繋げなくてはならないし、それがWRCチャレンジプログラム1期生である僕の義務だと思っています」

 世界王者という高い目標に向けて、勝田は全てを捧げる。29歳という年齢はラリードライバーとしてはまだこれからだが、常にリミットは意識している。自分自身の成功だけでなく、日本でWRCの人気を高めるために、そして次の時代を担う若手ドライバーたちにバトンを繋ぐために、勝田は重圧を糧にアクセルを踏み込む。

※12年ぶりに日本で開催されるラリージャパンは、11月10日~13日の間、愛知と岐阜の2県を舞台として戦われ、豊田スタジアムにサービスパークが設置される。

勝田 貴元TAKAMOTO KATSUTA

1993年3月17日、愛知県生まれ。祖父、父ともドライバーを務めたラリー一家に生まれ、11歳でカートデビュー。その後、全日本F3選手権を経て、2015年にラリーに転向。フィンランド国内ラリー選手権、WRC2を経て、2020年はヤリスWRCを駆ってWRC8戦に参戦。2021年から日本人として初めてWRCにフル参戦している。

WRCチャレンジプログラムとは?

「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」と「持続可能なモータースポーツ業界の実現」を目指す、トヨタ・ガズー・レーシング(TGR)が実施する若手ドライバー育成プロジェクト。

 WRCで活躍できる日本人ラリードライバーを発掘・育成するため、2015年にスタートし、勝田選手はその1期生。現在は、ワールド・ラリー・チームの本拠地でもあるフィンランドで、大竹直生、小暮ひかる、山本雄紀の3人の若手がトレーニングに励んでいる。

2期生の3人。左から大竹直生、小暮ひかる、山本雄紀2期生の3人。左から大竹直生、小暮ひかる、山本雄紀
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