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「新谷仁美さんの記録は絶対に越えなきゃいけない」。陸上界のニューヒロイン・不破聖衣来の「私の冒険」とは?

posted2022/10/20 10:00

 
「新谷仁美さんの記録は絶対に越えなきゃいけない」。陸上界のニューヒロイン・不破聖衣来の「私の冒険」とは?<Number Web> photograph by Koomi Kim

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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Koomi Kim

昨秋の衝撃かつ圧巻の走りで、一躍、陸上界のニューヒロインになった19歳。その後のケガから復帰した彼女にとって、自己ベストを更新する意味とは?

 昨秋、拓殖大学1年生だった不破聖衣来は陸上界にセンセーションを巻き起こした。駅伝では毎回ごぼう抜きを見せ、異次元の記録をマーク。そして12月には、初の1万mながら日本歴代2位(当時)の30分45秒21というタイムを叩きだしたのだ。

 レースで勝つことと、自己ベストを更新していくこと、陸上には2つの目標があります。でも自分は、レースで人と勝負をする場合でも、結局は自分自身との闘いなんだと感じています。たとえレースで勝ったとしても、レース展開、ラップタイムの上げ下げなど内容を細かく見ていくと、トータルとしては自分の中で腑に落ちないことも結構あるんです。だからこそ、自己ベストやレース前に立てた目標タイムを達成した時のほうが喜びは大きいですね。

 その意味で一番満足度の高かったレースは、中学2年のジュニアオリンピックです。全国の舞台もまだ2回目で、学年別ではあるんですけど初めて全国優勝できたんです。その時はすごい満足というか、すごいうれしかった。わー日本一って(笑)。驚きのほうが大きかったんですけど、タイムも含めて内容に達成感があったんです。

トラックで冒険をしていたような気が……

 昨年12月に1万mを走った時はレース中に“冒険”をしている感覚がありました。調子もすごくよくて、周回を重ねていく間にタイムが自然と上がっていく、というか。場内放送で細かくラップタイムや「このペースなら31分半」「31分が切れるかも」と言われてたので、それが本当だったら頑張ろうって。監督のラップを読む声もずっと聞こえていて、自分が1周400mをどのぐらいで走っているとか、この1周でペースが落ちた、上がったというのも全部分かっていました。7000mあたりがきつかったんですけど、7割も走り終わっているのに、ここでタイムを落としたくないという気持ちが出てきたんです。

 ここで耐えたら、ここを上げれば30分台が出るんじゃないか――。そういうふうに、自分がトラックで冒険をしていたような気がします。ただ、1万mを走ること自体が初めてで、未知の世界でもあったので、どのくらいのタイムが速いとかもちゃんとは分かってなかったんですけど(苦笑)。

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