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〈チーム代表&ドライバーとして挑むWEC〉小林可夢偉が思い描くレースチームの未来像「僕らに続く日本人を育てたい」
posted2022/09/08 11:00

text by

大串信Makoto Ogushi
photograph by
TOYOTA MOTOR CORPORATION
今年6月に開催されたル・マン24時間レースで、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)から出走したトヨタGR010ハイブリッドの8号車(セバスチャン・ブエミ/平川亮/ブレンドン・ハートレー組)が総合優勝を飾り、トヨタはル・マン史上4チーム目の5連覇を遂げた。
このレースでは2位にも、トヨタGR010ハイブリッドの7号車が入賞した。7号車にマイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペスと乗った小林可夢偉は、今シーズンから現役ドライバーでありながら、ル・マンを闘うトヨタのWEC(世界耐久選手権)チーム代表に就任しており、ドライバーとしては勝てなかったが、チーム代表としては初めての勝利を挙げることとなった。
「ドライバーとして総合優勝できなかったのは、めちゃくちゃ悔しかったですよ」と小林は言う。
「チーム代表だからと言って、その悔しさを隠す必要はないと思うんです。僕はずっとレーシングドライバーをやってきた人間だし、レースは勝ち負けの世界ですから、勝てなかったことを悔しいと思わないとその先成長しません。豊田社長に『どう?』と聞かれたので『めちゃくちゃ悔しいです』と答えたら『だよね』と言ってくれました。社長はドライバーの気持ちを理解されていますからね」
2つの仕事の軸となるドライバーファーストの理念
小林を今シーズン、チーム代表に任命したのは、トヨタの豊田章男社長その人である。現役ドライバーとチーム代表という二足のわらじを命じられた小林は、当初どう感じたのだろうか。
「7号車のチームメイトやクルマを準備してくれるメカニックやエンジニアたちは、7号車で勝つためにやっているのだから、チーム代表である僕もヘルメットをかぶってハンドルを握ったら、7号車で勝つために全力で集中して闘います。でも、一方でチーム全体を見て、7号車と8号車の2台でしっかり結果を残し、できれば1-2フィニッシュして『トヨタは強いな』と周りに見られる必要もある。だから7号車を降りたときには頭を切り替えて、2台を合わせてチームとしてベストな結果を残すことを考えないといけません。僕には2つの仕事があるんです」