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「本当の“怪物”は桑田なのでは?」PL学園・同級生が見たKKドラフトの真相。清原にはなかった圧倒的な才能「こいつ、オレたちと同じ人間なんか…」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKatsuro Okazawa/AFLO

posted2022/08/06 11:25

「本当の“怪物”は桑田なのでは?」PL学園・同級生が見たKKドラフトの真相。清原にはなかった圧倒的な才能「こいつ、オレたちと同じ人間なんか…」<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa/AFLO

1985年のドラフトを経て、PL学園の卒業式で2ショットの清原和博と桑田真澄

 本間は階段を駆け降りた。無人の廊下に向かって「おめでとう!」と叫んだ。教室が見えた。もう後方のドアに回るのももどかしかった。前方のドアを勢いよく開けると、教師の視線も、授業中であることもお構いなしに叫んだ。

「桑田、おめでとう! 巨人の1位やぞ!」

誰かが言った。「清原はどうなった?」

 その言葉に教室の空気が固まった。凍りついたようになった。誰も何も言わず、桑田本人もちらっと顔を上げただけで俯いていた。重たい沈黙が見慣れた教室を支配していた。

 本間は何が起こったのか分からず、呆然とその場に立っていた。

 誰かが言った。

「清原はどうなった?」

 本間は脳裏に残っている映像を頼りに答えた。

「おお、清原もようけあったわ。どの球団かは分からんけど……とにかく、ようけあったぞ」

 反応はなかった。誰もが顔を伏せたり、窓の外に視線をやったりしていた。静寂を破ったのは清原だった。最終的に6球団から1位指名を受けながら、本命の巨人からは指名されなかった四番バッターは、大きく舌打ちをすると机の足を蹴った。その音が静まり返った教室に響いた。

 清原は何人かを隔てて自分の前方に座っている桑田を睨んでいた。桑田は俯いたままだった。本間には2人の間に流れている空気が何なのか分からなかった。

 自分は何かまずいことを言ったのだろうか……。

 クラス中の視線が桑田に注がれていた。俯いていたエースはやがて立ち上がると、無数の冷たい視線から逃れるように教室を出ていった。

<#1、#2から読む>

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【著者インタビュー動画】
「清原和博を追い続け、何が見つかったのか。ノンフィクション界話題の作家・鈴木忠平に聞く」

#1から読む「オレよりすごい奴がおった」清原和博が父に伝えた衝撃。「真澄はショックだったみたいです」一方の桑田も…《KKのPL学園秘話》

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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