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「本当の“怪物”は桑田なのでは?」PL学園・同級生が見たKKドラフトの真相。清原にはなかった圧倒的な才能「こいつ、オレたちと同じ人間なんか…」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKatsuro Okazawa/AFLO

posted2022/08/06 11:25

「本当の“怪物”は桑田なのでは?」PL学園・同級生が見たKKドラフトの真相。清原にはなかった圧倒的な才能「こいつ、オレたちと同じ人間なんか…」<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa/AFLO

1985年のドラフトを経て、PL学園の卒業式で2ショットの清原和博と桑田真澄

「中学のときから好きな女の子のことだよ」

 それが彼の本心なのかどうか判断はつかなかった。ただ、すべての大会を終えた高校球児が祈ることなど案外そんなものかもしれないという気もした。そのときはそれくらいにしか考えていなかった。

 だがドラフト当日になってみて、あの朝の祈りが妙に腑に落ちた。桑田が甲子園の優勝投手になってもなお走り続けていたのも、すべてはこの日のためだったのではないかと思えてきた。

 ああ、そうか……。桑田は本当はプロに行きたかったのか。

 本間はすべての謎が解けていくような感覚に包まれていた。

 ――ドラフト会議の中継が始まったのは午前11時のことだった。本間は廊下に面した窓から視聴覚室のテレビを覗き込んだ。

 画面にはホテルの大広間で円卓を囲んでいる男たちが映し出された。プロのスカウトたちは一様にスーツ姿で険しい表情をしていた。ドラフト1位入札の緊迫感が伝わってきた。

 パ・リーグの最下位チームから順に1位入札の選手が発表されていく。冒頭、清原の名前が呼ばれた。地元大阪を本拠地とする南海ホークスが指名したのだ。それから日本ハムファイターズ、中日ドラゴンズ、近鉄バファローズと4球団が甲子園最多本塁打のスターを1位指名した。

 実況するアナウンサーの声が教室の外まで漏れてきた。

『清原、早くも4球団から指名されました!』

 やっぱり清原はくじ引きやな……。

「桑田さん、巨人の1位指名ですよ!」

 本間は、大人たちの手に委ねられた彼の命運に束の間、思いを馳せた。そしてまた画面に意識を向けた。カメラが引きになり、アナウンサーが少し声のトーンを上げた。

『さあ、そして、注目の読売ジャイアンツです』

 本間は画面を食い入るように見つめた。ドラフト会場に司会者の独特のアナウンスが響いた。

『読売、桑田真澄――』 そう聞こえた気がしたが、本間は何が起こったのか、すぐには飲み込めなかった。聴き慣れた名前がどこか遠くの他人のもののように思えた。

『巨人は桑田! 桑田ですかあ……』

 アナウンサーの声に驚きが込められていた。

   本間は思わずドアを開けると、視聴覚室にいた野球部の後輩をつかまえて訊いた。

「おい、どうなってるんや?」

「桑田さん、巨人の1位ですよ!」

 後輩は目を見開いてそう言った。そこで本間は我に返った。次の瞬間、廊下を駆け出していた。衝動的に体が動いた。脳裏には黒いウインドブレーカーを着て、ひとり走り去っていく桑田の背中が浮かんでいた。

 桑田に知らせてやらなければならない。祈りが通じたのだと、教えてやらなければならない――。

【次ページ】 誰かが言った。「清原はどうなった?」

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