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「本当の“怪物”は桑田なのでは?」PL学園・同級生が見たKKドラフトの真相。清原にはなかった圧倒的な才能「こいつ、オレたちと同じ人間なんか…」 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byKatsuro Okazawa/AFLO

posted2022/08/06 11:25

「本当の“怪物”は桑田なのでは?」PL学園・同級生が見たKKドラフトの真相。清原にはなかった圧倒的な才能「こいつ、オレたちと同じ人間なんか…」<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa/AFLO

1985年のドラフトを経て、PL学園の卒業式で2ショットの清原和博と桑田真澄

 本間が教室を抜け出したのは、むしろ自分のためだった。清原が1位候補だというのは分かる。ただ順位にかかわらず、自分や他のメンバーが指名されてもおかしくないはずだった。何しろ31期生は夏の甲子園で優勝を果たしたのだ。

 2年生からベンチ入りしていた本間は最後の夏、スターティングメンバーに名を連ねた。レフトを守り、おもに八番を打った。決勝戦の途中で代打を送られたが、紛れもなく優勝メンバーの1人だった。だから憧れのジャイアンツ入団を夢見るのは、何も清原だけの特権ではないはずだ、という思いがあった。

 授業中の廊下には誰もいなかった。ひんやりとした空気の中、急ぎ足で階段を上がって1階に出ると、視聴覚室はすぐ目の前だった。中を覗いてみると2年生が授業をしていた。テレビがつけられていて、チャンネルはドラフト中継に合わせられていた。今年のドラフト会議が学園全体にとっても大きな関心事なのだということが伝わってきた。

桑田はなぜプロにいかないのだろう?

 本間はそこでふと思った。

 そういえば、桑田はなぜプロにいかないのだろう?

 清原と並ぶ才能を持つ桑田は早稲田大学への進学を希望していたが、今更ながらそれが不思議に思えてきた。

 いつだったか、本間は桑田が読売ジャイアンツへの憧れを口にするのを耳にしたことがあった。

「PLに入って早稲田にいって、ジャイアンツに入る。中学のときにそう決めたんだ」

 本間と2人きりのときに桑田は言った。

怪物とは”桑田”ではないか?

 実際に桑田はもう十分にプロで通用するレベルにあった。わざわざ大学というステップを踏む必要などないはずだ。おそらくは31期生のほとんどがそう感じていた。

 清原は確かに怪物と呼ばれていた。だが、怪物という言葉があてはまるのはむしろ桑田のほうだと本間は考えていた。そう実感した瞬間があった。

 桑田が突然、鬼気迫るように走り始めたのは2年生の秋口だった。それまでもランニングの量では群を抜いていたが、さらに拍車がかかった。教団本部が建つ聖丘に晩夏の太陽が沈む時刻になると、エースは汗出しと呼ばれる真っ黒なウインドブレーカーに身を包んでグラウンドを出ていった。教団の敷地内にあるゴルフ場へひとり消えていく。それからしばらくは誰も桑田の姿を見なくなる。そして辺りが真っ暗になったころ、頭からびっしょりと濡れそぼった姿で寮に戻ってきた。

 桑田は何をしているんだ? 一体、どこまで走りにいってるんだ?

 多くの部員たちがそうした疑問を抱いていたが、従いていこうという者はいなかった。

 桑田の背中に他者を寄せつけない空気があったからかもしれない。

 本間にはエースの変化について思い当たることがあった。2年夏の甲子園決勝戦、PL学園は茨城の取手二高と対戦した。そのゲームで桑田は8点を失って敗れた。連投による疲労が身体を蝕んでいたのは明らかだった。

 きっと桑田は最後の夏に向けて、連投に耐えられるスタミナをつけようとしているのだろう。本間はそう推測した。そして確かめてみようと思った。

【次ページ】 こいつ、本当におれたちと同じ人間なんか…

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