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根尾昂がルーキー時代に語っていた“二刀流→ショート一本”の真意「野手の方がもっとやるべきこと、やりたいことがいっぱいある」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/07/10 17:03
1年目、3月のウエスタン・リーグの試合に出場した根尾
そして、根尾は打った。
オリックスの新外国人エップラーのスライダーを、昨日は手が出なかった変化球を打った。ライト前へ、白球の描く軌跡がきれいにまっすぐ伸びていった。
根尾「昨日あっての今日です。昨日、対応できなかったことについて、自分で解釈して、アドバイスをいただいて練習して、もっと打ちたいなと思って打席に入って……。無駄になってないですよね!」
この日も3三振はしたけれど、根尾が笑っている。できないことだらけのプロの世界が自分を掻き立てて仕方がないというかのように、キラキラ笑っている。
今と同時に、未来を見せる選手。
その探求の才気にあてられ、球場をフラフラしていると、昔馴染みのスタッフがお客さんを見送っていた。彼は遠い目をして、こう言った。
「根尾を見てるとね、今は打てなくても、いつか必ず打てるって、そう思うんです。お客さんもそうじゃないかな」
ああ、そうか! まだ何も始まっていないけれど、これからどうなるかもわからないけれど、みんな、あの上がり眉が真っすぐ指し示す、確たる未来を見にきていたのか。
すっかり陽が落ちた名古屋駅。ナナちゃんが7番のユニホーム姿で立っていた。
もう驚かない。君がそれを着ているワケはちゃんと知っている。
根尾昂Akira Neo
2000年4月19日、岐阜県生まれ。大阪桐蔭高校で4季連続甲子園出場し2年春、3年春夏と3度優勝。投手としては最速150km、打者としては高校通算32本塁打を記録。'18年ドラフトで4球団から1位指名を受けた末、中日に入団。今年6月、野手から投手への転向が発表された。177cm、80kg。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。