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根尾昂がルーキー時代に語っていた“二刀流→ショート一本”の真意「野手の方がもっとやるべきこと、やりたいことがいっぱいある」

posted2022/07/10 17:03

 
根尾昂がルーキー時代に語っていた“二刀流→ショート一本”の真意「野手の方がもっとやるべきこと、やりたいことがいっぱいある」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

1年目、3月のウエスタン・リーグの試合に出場した根尾

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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Kiichi Matsumoto

 6月21日、野手から投手に登録が変更となった中日の根尾昂。高校時代は投手として活躍し、プロ入り時にはショート専念を宣言した“ゴールデンルーキー”が1年目に語っていたこととは?
 入団間もない根尾にインタビューしたSports Graphic Number975号(2019年3月28日発売)根尾昂『上がり眉に込められた明るい未来』を特別に無料公開します(肩書などはすべて当時)。全2回の2回目 前編は#1

 かくして、ウエスタン・リーグの幕が開いた。「1番、ショート、根尾」のアナウンスに平日のナゴヤ球場へつめかけた1600人から歓声が上がる。

 マウンドにはオリックス山岡泰輔がいた。一軍の開幕投手に内定しており、そこに向けて登板してきた完全なる“格上”だ。

 1球目、外いっぱい、146kmの速球がパチーンとミットを鳴らす。

 2球目、ほとんど同じコースに147kmがズバリ。

 3球目、間髪入れず、今度は視界の外から降ってくるようなスライダーがドスン。

 3球三振。初の公式戦の第1打席、根尾はバットを振らせてもらえなかった。

 2打席目以降は振りにいったところを逆手に取られたり、力で押し切られたり。5打数ノーヒット3三振のルーキーは、それでも自分をぐるりと取り囲んだ報道陣の前に立ち、こうコメントした。

『自分が今まで見たことのないボールでした。悔しいです――』

根尾「見逃しをするにしても『ボールだ』と思って見逃したのと、勝手に体が止まって見てしまったのとでは違いますから。やっぱり、初めての変化球は今の自分だと見てしまったりする。次は同じにならないようにしないといけないですし、本当に、ああ、やることがいっぱいあるなあ、と」

スイングにも打球にも意志が通う。

 夕暮れのナゴヤ球場。期待のルーキーがたっぷりとプロの洗礼を浴びる様を目撃したお客さんたちがゾロゾロと家路につく。それでも通路に飾られた根尾のパネルの前には人だかりができ、カシャカシャとスマホにおさめ、それを手土産に帰っていく。

【次ページ】 本人決断の理由は?

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