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「このチーム大丈夫か?」移籍選手が戸惑ったほどのきつい筋トレをするフィジカル軍団・いわきFCの躍進の秘密とは?
posted2022/07/26 11:00

text by

川端康生Yasuo Kawabata
photograph by
Takuya Sugiyama
いわきFCが止まらない。
震災復興の一環として株式会社ドームがいわきFCを旗揚げしたのが2016年。福島県2部リーグからスタートしたチームは、ほぼノンストップで昇格を続け、昨季はJFLで優勝。わずか6年でJリーグの舞台に到達した。
そして今季参入したJ3でも、ここまで2位につけ(7月25日現在)、J2への自動昇格圏内にいる。
快進撃の原動力となっているのが「フィジカル」である。
設立時に〈日本のフィジカルスタンダードを変える〉と宣言したいわきFCは、それまでとは異なるアプローチで、チームビルディングを行ってきた。
シーズン前には「鍛錬期」と称して、ほとんどボールに触れることなく、ひたすら筋力アップに取り組む。
開幕前だけではない。シーズン中も筋トレは続く。試合前日でさえ、選手たちはベンチプレスを挙げにトレーニングルームにやって来るのだ。
「いまではもうそれがクラブのカルチャーになっているから」
大倉智社長も田村雄三スポーツディレクターも事も無げにそう言う。
しかし、もちろん勝手に芽が出て、自然に根付いた文化ではない。
なぜなら――サッカー選手に筋トレは必要ない。むしろ筋肉をつけすぎると、身体が重くなって走れなくなる。怪我にもつながる。
それが日本サッカー界の常識だったからだ。
そんな固定観念や先入観への挑戦。その挑戦の積み重ねがクラブのカルチャーを育み、チームの快進撃を実現したのである。
きつい筋トレに最初は戸惑った
「正直に言うと、はじめは『このチーム大丈夫か?』と思いました」と笑うのは昨季いわきFCに加入した古川大悟。
「ほぼ毎日筋トレやって、最初は筋肉痛もとれなかったし、もちろん筋肉がついた分、体重も重くなった。でも運動量が落ちることはなかったんです。むしろコンディションがよくなって走れるようになった。筋肉つけると重くなって……とそれまで僕も思ってましたが、覆されました」
チーム在籍4年目の日高大も入団時を苦笑しながら振り返った。
「入ってすぐ鍛錬期だったんですけど、それはきつくて……。そのタイミングでプロテインとかサプリも摂るようになったので、体重も筋肉量もすぐに目標値に達しました。骨格筋量を1年で1キロくらい増やすという目標だったんですけど、あっという間に」