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[甲子園優勝校の宝物]智辯和歌山「“ちゃんとやってよ”が生んだ奇跡の走塁」
posted2022/04/14 07:00
![[甲子園優勝校の宝物]智辯和歌山「“ちゃんとやってよ”が生んだ奇跡の走塁」<Number Web> photograph by Naoya Sanuki](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/5/a/-/img_5a69e917e111f957654d234489ae5535336998.jpg)
'20年12月2日から3日間、イチローは智辯和歌山の野球部を指導した
text by

石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Naoya Sanuki
このほうがよくない? その一言と共に提案された“幻のプレー”が全国制覇の1カ月前に実現していた。その教えを守り続けた部員たちの成長と継承の物語。
昨夏の甲子園を制覇した智辯和歌山とイチローが紡いだ物語、まずは登場人物を覚えてほしい。智辯和歌山の選手は3人――どこまでも生真面目な主将、1番センターの宮坂厚希。チームきっての元気印、2番セカンド、左打ちの大仲勝海。9番ショート、俊足好打に堅守が加わる大西拓磨。この3人がそれぞれの役を完璧に演じたからこそ、あの“幻のプレー”は生まれた。
2020年の冬に遡る。
イチローを取り囲む智辯和歌山の選手たちは戸惑っていた。頷くもの、目が泳ぐもの、まったく表情が変わらないもの――。
「最初にこの話を聞いたときはちんぷんかんぷんで、頭の中がはてなマークだらけでした。でもよくよく説明を聞いて考えてみたら、ああ、なるほど、確かにそうだなと思って、すぐにチームとして練習してみようということになりました」(主将の宮坂)
「何を言っているのかはすぐにわかったんですけど、すんげえ考え方するんだなって、そんなことを思いつけるイチローさんのほうにビックリしました」(俊足の大西)
「イチローさんの話を聞いてすぐに理解できましたし、何をしなくちゃいけないのかもわかりました。ただ、僕の足だと練習でいくらやってみてもセーフにならないんで(笑)、足の速い宮坂や大西じゃないとムリだなと思いました」(元気印の大仲)