審判だけが知っているBACK NUMBER
<私が裁いた名勝負>大激戦の10区で出した「どきなさい!」の指示。
text by

小堀隆司Takashi Kohori
posted2022/01/03 07:00

吉儀宏さん
語り継がれる名勝負をその演者のひとり、審判が振り返る。彼しか知らない新たな景色が見えてくる。
2011年
第87回 東京箱根間往復大学駅伝競走
1月2日~3日/東京~箱根
大学駅伝三冠を狙う早稲田は1区に大迫を起用し4区まで独走。3連覇を狙う東洋は5区柏原がトップに立ち往路を制したが、6区で再逆転を許すと差が拡大。8区から10区まで区間賞の猛追も、早稲田に史上最僅差の21秒及ばず。シード権争いも10位と11位が3秒差という大激戦に。
◇
87回大会を振り返って、真っ先に浮かんでくるのは芦ノ湖の雪景色です。復路当日の朝に起きてみると、一面にうっすらと雪が積もっていた。この雪で何か事故が起きなければいいな、と心配したのを覚えてます。私は81回から90回大会までの間に、9つの大会で審判長を務めましたが、レース中は本部車に乗り込んで、各中継所や審判員から無線で入ってくるあらゆる問題に対処するのが常でした。
