第98回箱根駅伝(2022)BACK NUMBER

「ヴィンセント」だけじゃない。東京国際大学の出雲駅伝優勝が〈第98回箱根駅伝〉に与える影響とは?

posted2021/11/16 11:00

 
「ヴィンセント」だけじゃない。東京国際大学の出雲駅伝優勝が〈第98回箱根駅伝〉に与える影響とは?<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

出雲駅伝で東国大アンカーのヴィンセントは2位に1分57秒差をつけてフィニッシュ

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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Nanae Suzuki

 出雲駅伝の結果から箱根駅伝の常連強豪校は、東京国際大学の「未知の強さ」に畏怖を感じたのではないだろうか。レース中、青山学院大学の原晋監督は、3区で東国大が先頭争いをしている中、「もう東京国際大学でしょう」と白旗を上げた。

 各校ともアンカーのイェゴン・ヴィンセント(3年)の脅威を回避すべく、それまでの区間でいかに貯金を作るかを戦略の軸として考えていた。駒澤大学の大八木弘明監督もレース前、「ヴィンセントに繋がる前に1分は欲しい」と具体的に勝つために必要なタイムを述べていた。そこには、その前の区間までにタイム的な余裕を作れるはずだという計算が働いていたのだろう。

 しかし、東国大は、机上の計算を吹き飛ばした。

 前半から中盤にかけて粘り強く走り、3区の丹所健(3年)でトップに立った。このレース展開を含めて東国大の走力は、各校にとって大きな誤算となった。しかも、優勝候補の駒大は複数の区間で思うような走りができず、想定外の出来事にレースプランが完全に崩れてしまった。青学大と早稲田大学、東洋大学、國學院大學は2、3位争いに力を削がれ、前を追う力を維持できなかった。

「今年は東京国際大学に要注意ですね」

 優勝候補が苦しむ中、東国大は、そのままトップを維持。余裕を持ってアンカーのヴィンセントにたすきを繋げるという最高の展開を見せ、各校にとってはすべての可能性が萎んでしまう展開になってしまった。

 1区から安定した高い走力でレースの流れを維持し、大砲に繋げる。

 駅伝における「勝利の方程式」を持つ東国大は、出雲の勝利で各校にとって新たな脅威になったのである。

「勢いといい、選手層といい、今年は東京国際大学に要注意ですね」

 原監督は、レース後、そう語った。

 その意識を各校に植え付けたことは、東国大にとって、大きな収穫になった。

【次ページ】 これまでの東国大対策はもう通用しない

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