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「監督を辞めた今も」2017年、わずかな差でホークスに敗れ、ラミレスの胸に残ったもの。【SMBC日本シリーズ】 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2021/11/11 11:01

「監督を辞めた今も」2017年、わずかな差でホークスに敗れ、ラミレスの胸に残ったもの。【SMBC日本シリーズ】<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

アレックス・ラミレスは現在、横浜市内でスポーツジムを経営している

本人に伝えるベストなタイミングは

 ラミレスは白崎が全身から発する渇望と自信を見逃さなかった。それはSMBC日本シリーズという舞台で結果を出すための重要な条件だった。

 そして、この日のスターティングメンバーに抜擢する上で、本人に伝えるベストなタイミングを探っていた。

「練習の前に伝えたらパニックになっていたかもしれない。だから試合直前のバッティング練習で変わらずにいいものを見せていたのを確認してから、先発で出場させると決めました」

 ラミレスは練習を終えると、空欄にしていた場所へ白崎の名前を書き込んだ。予想通り、チーム内からは驚きの声があがった。

 午後6時34分、プレーボール。相手はホークスの主戦・東浜巨だった。ベイスターズ打線は4回まで得点することができなかった。2回に1点を先制され、追いかける展開になっていた。

5回、白崎の第2打席目がやってくる

 5回、白崎がこの試合2度目のバッターボックスに立った。3球目、東浜のカットボールにバットを振り出すと快音が響いた。打球は高々と上がり、レフトスタンドへ消えた。シーズン中に1本もホームランのなかった伏兵による同点弾だった。

 ベイスターズは白崎の本塁打を皮切りに3点を奪って逆転した。敵地のスタンドがどよめいていた。もう誰も、彼らが日本一になる可能性を疑わなかった。いつしか三塁側のベンチにはラミレスと同じように、確信を秘めた顔が並んでいた。

 結果的にベイスターズの希望は、9回1アウト、あと2人という状況から、ストッパー山﨑康晃が内川聖一に浴びた同点ホームランによって打ち砕かれることになった。

 延長戦でホークスを凌駕するだけの力はもう彼らには残されていなかった。11回の激闘の末にサヨナラ負け。戦いは終わった。

「3対1で勝っていた8回裏です。1アウト三塁でピッチャーゴロを砂田(毅樹)がファーストへ投げた。アウトを確実に取りにいった選択でしたが、ホームに投げていればアウトのタイミングだった。あのわずかな判断の差で1点差になった。もし2点差で最終回を迎えていたら、内川にホームランを打たれても、まだ勝っていた。砂田を責めるつもりはないですし、悪いプレーではなかったんですが、そういう小さなものが勝敗につながっていくのです」

【次ページ】 まだセはパに勝てないのか

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