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ラミレス監督はなぜ不振の桑原を使い続けたのか。ホークスとの激闘の舞台裏を明かす。【SMBC日本シリーズ】 

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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photograph byNaoya Sanuki

posted2021/11/11 11:00

ラミレス監督はなぜ不振の桑原を使い続けたのか。ホークスとの激闘の舞台裏を明かす。【SMBC日本シリーズ】<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

アレックス・ラミレスは2017年、横浜DeNAベイスターズの監督としてSMBC日本シリーズで指揮を執った

1番・桑原を代えなかった理由

 ベイスターズ苦戦の要因のひとつに挙げられていたのが、1番バッター桑原将志の不振だった。シリーズに入った途端、ペナントレースで打線の火付け役となってきた男のバットから快音が聞こえなくなった。第1戦からの3試合で13打数0安打と完全に沈黙していた。

 たった7試合の短期決戦は、流れに乗れなかった方が敗れるのが常識だ。評論家やメディアからは、桑原をスターティングメンバーから外すべきではないかという声も出ていた。

 だが、指揮官のラミレスは負ければ終わりという第4戦も、これまでと同じように桑原の名前をメンバー表の一番上に書いた。チームに対して、特別なアクションを起こすこともなかった。

「仮に桑原が打てなくても、チームが勝てば、彼の第5戦へのモチベーションは『明日は打ってやろう』となる。でも他の選手を使って勝つと、『明日自分が出て、負けたらどうしよう』となってしまう。誰もが負けたら終わりということはわかっていた。でも私はベストを尽くせ、楽しんでくれと言うだけでよかった。ホークス相手にやってくれる、という確信があったので」

選手たちが自信さえ手にしてくれれば

 桑原と心中しようというのではなかった。ラミレスの頭の中にはすでにホークスと自軍の選手たちのデータがインプットされていた。そこから弾き出される確率からすれば、桑原がこのまま打てないことも、チームが負け続けることも考えにくかった。かつて相手キャッチャーの配球を読むことで結果を残してきたラミレスは、監督としてもシリーズを戦える確かな根拠を手にしていた。あとは、選手たちが自信さえ手にしてくれれば、勝てるはずだと考えていた。

 事実、シリーズの流れはラミレスの読み通りに転換していった。第4戦に先発した濵口遥大はホークス打線に8回1アウトまでヒットを許さず、眠れるトップバッターだった桑原は2本のヒットを放って目を覚ました。機能を取り戻した打線は6点を奪って、チームはシリーズ初勝利を挙げた。

 その快勝劇を、ラミレスは穏やかな表情で見つめていた。驚きもしなければ、はしゃぐこともなかった。ホークスに力の差を見せつけられていた選手たちは、そんな指揮官の姿を見て、少しずつ本来の動きを取り戻していった。

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