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ラミレス監督はなぜ不振の桑原を使い続けたのか。ホークスとの激闘の舞台裏を明かす。【SMBC日本シリーズ】

posted2021/11/11 11:00

 
ラミレス監督はなぜ不振の桑原を使い続けたのか。ホークスとの激闘の舞台裏を明かす。【SMBC日本シリーズ】<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

アレックス・ラミレスは2017年、横浜DeNAベイスターズの監督としてSMBC日本シリーズで指揮を執った

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鈴木忠平

鈴木忠平Tadahira Suzuki

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Naoya Sanuki

 アレックス・ラミレスは現役選手として3度の日本シリーズに出場した。その度にいつも不思議に思うことがあった。

「日本シリーズの前になると、報道陣から取材を受けます。そのとき、多くの選手はあまり語らないんです。それが自分には『人並み以上の結果を出したいという気持ちが、薄いのではないか』と映っていました。だから私は自分が望んでいることを表に出した。『2本も3本もホームランを打ってチームの勝利に貢献したい』と、そう口にしてモチベーションを生み出した。結果を望む気持ちと自信がなければ、シリーズのようなタフな舞台で結果は出せないと考えていました」

 2008年11月2日、読売ジャイアンツと埼玉西武ライオンズのシリーズ第2戦は同点のまま9回裏を迎えていた。巨人軍の4番として打席に立ったラミレスは相手投手の初球、フォークボールを見逃した。1ボール。その時点で次も同じ球がくると確信していた。

「私が日本に来て、最も学んだことはピッチャーではなくキャッチャーと対戦すること、配球を読むことでした。相手のキャッチャーを調べ上げることで結果を残すことができた。あの時もフォークが来るだろうと読んでいました」

 それがラミレスの自信の拠りどころになっていた。

特別な舞台で戦うために必要なもの

 果たして、ラミレスのバットは狙い通りストライクゾーンにきたフォークボールをとらえた。打球はバックスクリーン左に飛び込むサヨナラホームランとなった。

「野球に携わるすべての人が日本シリーズでサヨナラホームランを打つことを夢見ているはず。野球人生で、あれ以上の瞬間はないです」

 総立ちの観衆と沸き上がるベンチ、ダイヤモンドをまわる恍惚の中でラミレスは確信していた。

 この特別な舞台で戦うために必要なものは漲るような自信なのだ。確かな根拠さえあれば、それは誰でも持つことができるものなのだと。

 それから9年後、まさか自分が指揮官としてシリーズの舞台を踏むことになるとは、この時点ではまだ想像すらしていなかった――。

 2017年のSMBC日本シリーズは一方的な展開になっていた。野球ファンの興味を削いだまま終わってしまいそうだった。

 パ・リーグ王者の福岡ソフトバンクホークスが初戦から3連勝し、セ・リーグ3位から勝ち上がった横浜DeNAベイスターズはもう後がないところまで追い詰められていた。

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