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[日米オークス制覇]シーザリオ&福永祐一「幻と消えた仰天構想」

posted2021/10/08 07:01

 
[日米オークス制覇]シーザリオ&福永祐一「幻と消えた仰天構想」<Number Web> photograph by Kiichi Yamamoto

父スペシャルウィーク、母キロフプリミエール(英)。栗東・角居勝彦厩舎。'04年にデビュー、'05年オークス制覇。続くアメリカンオークスで父内国産の日本調教馬初の海外GI制覇。'06年引退、繁殖牝馬となり3頭のGI馬を輩出。今年2月27日没。通算6戦5勝

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片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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Kiichi Yamamoto

怪我による突然の引退はファンを落胆させた。実は「F1」とも形容された爆発的な末脚は2大陸での頂点さえも通過点にするはずだった。鞍上が胸に秘めていた壮大なプランを明かす。

 昨年はキャリアハイの134勝。今年、更に上回るペースで勝ち星を量産しているのが12月9日に45歳を迎える福永祐一騎手だ。「調教師という仕事にも大きな魅力を感じています」と明言してから何年も経ったが、今年も願書を提出することはなかった。それもそのはず、最近の4年でダービーを3回も勝っているのだから、ジョッキーという苛酷な仕事を誰よりも楽しんでいる代表格が福永なのだ。

 '05年、と言えば16年も前の話になる。その夏にゼンノロブロイ(美浦・藤沢和雄厩舎)が武豊騎手とのコンビで英国遠征を敢行。伝統のインターナショナルS(ヨーク競馬場、芝10ハロン88ヤード、GI)に挑戦し、僅かにクビ差及ばずの2着で大魚を逸した。その遠征に、勝負服ではなくビジネススーツで同行したのが福永だった。「騎乗停止になっちゃったので見学に来ました」と照れたような笑顔で言い訳をしていたが、ヨークの起伏に富んだ馬場を、脱いだ上着を片腕に抱えて汗だくになりながらも、丁寧に歩いて見て回っていたのが強く印象に残っている。

「ヨークに行こうと思い立ったのはヨークシャーオークスの下見のつもりでした」

 これは誰も気づかなかった福永の深謀遠慮だった。この'05年はシーザリオが日米のオークス連勝の快挙を達成して話題を集めた年で、米国ロサンゼルスのハリウッドパーク競馬場でアメリカンオークス(芝1マイル1/4、GI)を勝って凱旋した殊勲馬の次走を、福永だけは密かにヨークシャーオークス(芝11ハロン188ヤード、GI)へ挑戦するプランを温めていたのだ。今年スノーフォールが勝ったレースで、オークスの名がついているが、古馬も走れる牝馬限定戦だ。もし勝てば、日米欧をまたぐオークス制覇。誰もやったことがない、いや誰も発想さえしなかった仰天構想が福永の頭の中には描かれていたのだ。

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