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テニス界の伝説・グラフが52歳に 絶対女王に憧れ続けた“ある青年”が「12年越しの片想い」を実らせるまで――2021上半期 BEST3

posted2021/09/18 17:00

 
テニス界の伝説・グラフが52歳に 絶対女王に憧れ続けた“ある青年”が「12年越しの片想い」を実らせるまで――2021上半期 BEST3<Number Web> photograph by Getty Images

6月14日はグラフの誕生日。夫はキャリアゴールデンスラムを達成した元テニス選手のアンドレ・アガシである

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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2021年上半期(3月~8月)、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト3を発表します。テニス部門の第1位は、こちら!(初公開日 2021年6月14日/肩書などはすべて当時)。

 テニス史上ただ一人、年間グランドスラムにオリンピックの金メダルを合わせた〈年間ゴールデンスラム〉を1988年に達成したのがシュテフィ・グラフである。グランドスラムの優勝回数22という記録は、マーガレット・コートの24回、セリーナ・ウィリアムズの23回に次ぐ。1位在位期間は男女を通じて最長の377週。最大の武器だったフォアハンドは、今なお史上最高と謳われている。

長い長いアガシの片想いの物語

 そして、30歳での引退からもうすぐ22年になるこの女性をさらに特別にしている事実が、グランドスラム優勝8回の元王者アンドレ・アガシと夫婦であるということだろう。プレーヤー同士の夫婦はそう珍しくないが、これほど“テニス・スペック”の高いカップルは当然ながらほかにいない。

 グラフとアガシが急接近したのは、2人がともに優勝した’99年の全仏オープンの直後だった。当時29歳だったグラフは膝の故障にも悩まされて3年近くメジャータイトルから遠ざかり、ランキングは6位まで落ちていた。お決まりの「時代の終焉」が囁かれる中での復活優勝となった大会だ。世界2位のリンゼイ・ダベンポート、3位のモニカ・セレス、そして決勝で18歳の若き女王マルチナ・ヒンギスを全てフルセットで次々と倒した大会終盤の奇跡が、このトロフィーにいっそうの輝きをもたらす。 

 しかし、それからわずか2カ月で引退を発表。その翌月にはアガシの住むラスベガスの家に移ったというニュースが駆け巡った。アガシは女優のブルック・シールズとその年に離婚し、グラフも長年交際していたレーサーのミヒャエル・バーテルズとその年に別れたばかりだった。2人の交際のニュースは世界を驚かせたが、それまでには長い長いアガシの片想いの物語があったのだ。

ウィンブルドンのダンスパーティーで

 2人が揃って優勝したグランドスラムはその全仏オープンが2度目で、最初は’92年のウィンブルドンだった。ウィンブルドンでは毎年閉幕後に、各種目のチャンピオンたちが一堂に会すダンスパーティーが催され、そこで男女のシングルス・チャンピオンはダンスを踊る伝統がある。

 アガシには予期せぬ事態だったのだろう。すでに全仏で2回、全米で1回の準優勝を経験していたが、プレースタイル的にウィンブルドンはもっともチャンスの乏しい大会と見られていた。決勝の前日、友人とともにタキシードを新調するために町へ出たアガシは、もうダンスのことで頭がいっぱいだったという。女子のチャンピオンはもうその日に決まっていた。

【次ページ】 アガシ「待ち遠しくてしかたなかった」

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シュテフィ・グラフ
アンドレ・アガシ

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