Sports Graphic NumberBACK NUMBER

男子バレーの飛躍を支えるアシックスの技術。西田、石川、髙橋を「より高く、より遠くへ」

posted2021/07/20 11:00

 
男子バレーの飛躍を支えるアシックスの技術。西田、石川、髙橋を「より高く、より遠くへ」<Number Web> photograph by asics / Itaru Chiba / Hirofumi Kamaya

text by

小堀隆司

小堀隆司Takashi Kohori

PROFILE

photograph by

asics / Itaru Chiba / Hirofumi Kamaya

 3%は決して小さな数字ではない。

 シューズを替えれば、ジャンプの高さが平均で3%向上するといわれれば、興味を示さないバレーボール選手などいないだろう。

 ただし、誰もが履きこなせるシューズではないとすれば、それは禁断の果実にも喩えられるのかもしれない。

 アシックスが開発した「METARISE」は、“より高く安定してジャンプする”をコンセプトのスパイカー向けのバレーボールシューズだ。走り高跳びなどバレーボール以外の知見も活用し、技術者がアイデアを出し合って設計されたという。いわば、東京オリンピックに向けた秘密兵器。どのようにして開発に至ったのか。開発担当の脇田大樹さんが詳しい。

「国際バレーボール連盟の調査によれば、得点の半分以上が最初のアタックで決まっているそうです。ならばより高く安定したジャンプにフォーカスすれば、攻撃のパフォーマンスは上がるんじゃないかと。そんな発想から開発に着手したのが2017年3月のことでした」

 選手がジャンプする際のモーションを分析した結果、助走のエネルギーをロスさせずに跳躍方向へ伝えるには、体全体を後傾して接地し、スムーズに前方向へ体重移動することが重要だとわかった。シューズがその動きを促し、サポートすることは可能だろうか……。

最初の試作品に予期せぬ反応が……

西田が着用する「METARISE TOKYO」。独特のかかと形状で、本人曰く「バイーンと跳ねる」西田が着用する「METARISE TOKYO」。独特のかかと形状で、本人曰く「バイーンと跳ねる」

 何度も試作を繰り返し生まれたのが、カーブ状にデザインされたヒールと、剛性の高いプレート(樹脂パーツ)である。やや専門的になるが、カーブ状のヒールは後傾状態での踏み込みを促し、サイドに組み込まれたプレートが安定性をもたらす。ほかにもホールド性を高めるためのダイナラップや、ソックスのように足を包み込むモノコック構造を採用することで、選手の能力をより引き出す、自信のシューズが完成した。

 しかし、アシックスがサポートするバレーボール男子日本代表メンバーの元に最初の試作品を届けると、そこで予期せぬ反応が返ってきた。

「かつてないような形のシューズでしたので、『自分には合わない』と話す選手もいました。その中で例外的な反応を示してくれたのが西田(有志)選手で、彼は『多少違和感はあるけど、より高く跳べるのであれば履きこなすチャレンジをしたい』と話してくれた。そこからが本当のスタートでした」

【次ページ】 完成までに作ったシューズは100足以上

1 2 NEXT

ページトップ