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カープ栗林良吏、コーチが証言する「1年目っぽくない」徹底ぶり…登板10分のために“11時間以上前に球場入り”

posted2021/06/29 11:03

 
カープ栗林良吏、コーチが証言する「1年目っぽくない」徹底ぶり…登板10分のために“11時間以上前に球場入り”<Number Web> photograph by KYODO

広島が苦戦しているなか、絶対的守護神としてチームを牽引する栗林良吏(24)

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 マウンドに上がった表情からは、不安など一切感じさせない。新人とは思えぬ威風堂々とした佇まい――。プロ1年目から広島の守護神を託された栗林良吏からは、自信があふれる。

新人で“ただ1人” 侍ジャパンに招集された逸材

 低迷するチームの中、球団史、そしてプロ野球の歴史に名を刻む活躍を見せている。

 開幕22試合連続無失点。新人としてデビュー登板から22試合連続無失点は2リーグ制後新人最長記録であり、広島投手としては開幕から22試合連続無失点は球団新記録だった。

 6月13日オリックス戦で連続無失点の記録は止まったものの、その後も3連続セーブ中(6月28日現在)と、抜群の安定感を誇る。栗林はまだ、セーブシチュエーションでの失敗がない。すでに風格すら感じるほど。侍ジャパンの稲葉篤紀監督の目に留まり、今夏開催予定の東京五輪の侍ジャパンにも新人でただ1人、選出された。

 高い技術力は、言うまでもない。150キロ前後の直球は威力、キレともに十分。フォークは真っすぐと同じ軌道からストンと落ち、打者に何度も空を切らせた。奪三振率13.99は12球団の抑えの中でトップの数字を誇る。さらに、カットボールとカーブを高いレベルで操れることで投球の幅も広がっている。

「“準備上手は仕事上手”という言葉があるように……」

 高い技術力を最大限に発揮させることができるのも、栗林の凄みだろう。

「“準備上手は仕事上手”という言葉があるように、準備は野球に限らず大事なこと。社会人時代から変わりません」

 何事にも最大限の成果を得るためには、環境や態勢を整える準備が大切となる。トヨタ自動車時代から、そのことを理解し、集中し、準備する実行力を養ってきた。

 登板時間だけ見れば、約10分程度かもしれない。だが、栗林の登板に向けた準備は試合前から始まっている。ナイターでは、試合開始8時間前には球場入り。登板時間からさかのぼれば、11時間以上前だ。

 アーリーワークでのトレーニングは欠かさない。全体練習で中継ぎメニューをこなし、気持ちをほどく。試合が始まり、登板の可能性がある試合中盤にはストレッチを始め、それに合わせて気持ちも徐々に高めていく。8回から運動強度を上げると、マウンドで15球。静かにコールを待つ。

 試合を決着させる最終局面で登板する抑えにとって、身体の準備よりも、気持ちの準備の方が大事なのかもしれない。

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