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奥原希望と海外遠征の苦労。コロナに翻弄され、飛ばないシャトルに消耗しても全英オープンで勝てた理由とは。

posted2021/06/02 11:00

 
奥原希望と海外遠征の苦労。コロナに翻弄され、飛ばないシャトルに消耗しても全英オープンで勝てた理由とは。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

奥原は昨年10月のデンマーク・オープンで2年ぶりの優勝を飾ると、全英オープンも5年ぶりに制した。

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Kiichi Matsumoto

今年3月、奥原希望はバドミントン全英オープン女子シングルスで5年ぶりの優勝を果たした。英バーミンガムで開かれた国際大会は新型コロナウイルスの影響もあり、不測の事態が発生。それでも奥原は豊富な海外遠征の経験から、すぐに環境と状況に適応する。帰国した奥原に、大会の振り返りと海外遠征の心得を聞いた。

 日本に帰ってきてからは、空港近くのホテルで3日間、そして自宅で10日間の隔離を経て、普通の生活に戻りました。ヨーロッパは帰ってきたときの時差ボケがつらいのと、隔離用ホテルがトレーニングできるような広さもなかったのでなかなか大変でした。運動ができないとカロリー計算も難しくなりますし、疲労がないと眠りに就きづらくなります。とはいえ今回で3度目なので、だいぶ“隔離慣れ”しましたけど(笑)。

 3月の全英オープンは、コロナ対策が徹底されていました。宿舎に外部の人が立ち入れないようになっていて、私たち選手も外出禁止。それでも出場選手にコロナ陽性者が出たことで、タイムテーブル発表の2時間後に試合開始という、初めての状況を経験しました。宿舎から会場までのバスは予約制なので、「2時間後に試合です」と言われてから慌てて予約してバタバタとバスに乗り……あまり落ち着かないまま、初戦を迎えていました。

海外遠征にハプニングはつきもの

 その中でも1回戦から決勝まで5試合、私の武器であるフットワークを存分に使って戦い抜くことができました。優勝という結果を出せたのは、「どんなスケジュールになっても自分のやることは変わらない」と割り切れたから。相手がスピードを上げて攻めてきたときに、こちらもスピードを落とすことなく引かずにプレーできたことも勝因のひとつです。コロナ禍でじっくり練習してきたことを試合で試せる、という喜びも感じながらプレーしていました。

 バドミントン選手は海外遠征が多いので、ハプニングはつきものです。過去には試合に向かう飛行機が台風で欠航し、いつ飛ぶか分からない中、空港で寝袋を渡されたものの、人が多くて寝袋を広げる場所を探して歩き回った、ということもありました。食事の面でも現地の油が合わないことがあるので、なるべく油の使われていないものを選びます。このように海外遠征では、自分のコンディションを上げることは難しいので、どれだけ落とさずに維持できるかを、常に考えています。

 だからバドミントン選手は海外でのハプニングでイライラしませんし、環境に適応する能力は高いかもしれません。そもそもシャトルが環境に左右されやすいので、常に適応力を問われている競技なんです。会場の大きさ、施設の空調、風の向き、気温や湿度。会場によって異なる要素に対応しながら戦っているので、それが生活にも役立っているのかな。

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